※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
「もはやカローラを80点主義などとは言えない」という原稿を読んだのはいつの頃だろうか。少なくとも20年、下手をしたら30年近く前のことかもしれない。
トヨタは、会社としては割と嫌われ者だ。製品で覇権を取り、グローバルマーケットでもシェア10%越えと驚異の人気を持ちながら、ファンよりアンチが多いという会社は、知っている限りトヨタとマイクロソフトしかないのではないか。
デカくて強いものに対するアンチテーゼなのか、あるいはマーケットの覇者に擦り寄っていると思われたくないのか。特に原稿を書く職業の人はトヨタと対峙(たいじ)する時に斜に構えがちになる。
そういう世の中の雰囲気の中で、カローラクロスは、これまた難しいクルマだ。率直な感想としては「十分以上に良い。だけどこれといって光るとか、ウリになりそうな何かがない」。という書き方をすると、これがまた「だから80点主義なんでしょ?」という話になるのだろうが、そういわれると、そうじゃない。
SUVとしてはスペースユーティリティを優先したことが分かるルーフライン。リアガラスの傾斜が穏やかで、ルーフラインの後ろ下がりも抑制されている
このあたりで、書き手としては一回固まる。褒めようと思えば相当に褒められるし、でもその背中を押してくれる何かはない。ちょっと不安だ。「お前、トヨタの提灯持ちか?」と言われたくないのは誰だった同じだ。それでも褒めて後悔なしと思えるほど思い入れられないのも確か。
褒めようと思えば褒められるし、文句を付けようと思えば、うれしさ領域でいくらでも足りないと主張できる。クルマを持つことの中に含まれるヨコシマな気持ちを擽(くすぐ)ってはくれない。男の子の魂をがっちり掴(つか)んで放さない合体メカ的な何かとか、埠頭の係留柱(ボラード)に片足乗せてパイプでも咥えてやろうか、みたいなバンカラな気持ちに追い風が吹いてこないのだ。クルマの世界でコスプレする「俺」の居場所が見付からない。
だからといってダメ出しをしようと思っても、スキは多くない。強いていえばGA-Cプラットフォーム全部が共通でダメなところである床の振動くらい。ステアリングギヤの操作感にもう少し艶(つや)があっても良いけれど、剛性も精度もちゃんと出ていて、「それを実現するためには多少高くなってもやるべき」とまではとても言えない。
だから難しい。ともすると、褒めるか貶(けな)すかというスタンスを最初に決めて話を始める、つまり結論ありきで書いてしまう気がする。誠に踏み絵のようなクルマである。
- ダメなカローラと良いカローラ
旧型のカローラと、TNGAベースの新型カローラは月とすっぽんくらいに違う。2010年前後デビューのトヨタ車の出来はありていにいってひどい。新型カローラシリーズは、だいぶ素晴らしい。完璧とはいわないが相当に良い。先行して登場したカローラ・スポーツで感じた違和感はどのようになったのか。
- 新型アクア ヤリスじゃダメなのか?
7月19日、トヨタ自動車は新型アクアを発売した。先代(初代)のアクアを振り返ってみれば、これはなかなかに酷(ひど)いものだった。そして、今回のアクアにはもうひとつ大きなトピックがある。それがバイポーラ型バッテリーの採用だ。
- 新型86とBRZ スポーツカービジネスの最新トレンド
トヨタとスバルは、協業開発したFRスポーツカーとして、2012年からトヨタ86とスバルBRZを販売してきた。この2台のスポーツカーがこの度フルモデルチェンジを果たし、袖ケ浦フォレストレースウェイで、プロトタイプの試乗会が開催されたのだ。そこで86/BRZのインプレッションレポートと併せて、何がどう変わり、それがスポーツカービジネスをどのように変えていくかについて、まとめてみたい。
- 「国民車」ヤリスクロス
原稿を書く側にしてみると非常に困るクルマだ。何か得意な芸があって、そこに集中して説明すれば伝わるというクルマではなく、オールラウンダー型の車両なので良いところを挙げていけばキリなく、それを全部書いていては冗長になる。かといって端折ると正確ではなくなる。正直だいぶ困っているのだ。
- トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
- 新型ハリアーはトヨタの新たな到達点
トヨタは、売れ筋のSUVマーケットにまた強力な新兵器を投入する。SUVバリエーションの最後のピースであるハリアーだ。結論からいえば、新型ハリアーは、多面的なその調律に成功し、トヨタブランドの範疇(はんちゅう)の高級というものが、バラバラの要素ではなく、一つの方向にキチンと収斂(しゅうれん)して、なるほどと思わせるものになっていた。
- カローラ・セダン/ワゴンが意味するもの
最量販車種の座をプリウスに奪われ、ファミリーカーの本流の座はノア/ボクシーに奪われた。気がつくとカローラは「年寄り向けの地味なクルマ」でしかなくなっていた。さらに世界各国で販売されるカローラは、地域によって求められるキャラクターが異なる。「スポーツ」「高級」「取り回し」の3つを同時にかなえるクルマを目指さなければいけない宿命を持ったカローラ。TNGAでハード的には対応を進めたが、問題は「自分のものにしたい」と思わせるキャラクターが立っているかどうかだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.