クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタSUV陣の最後の駒 玄人っぽいクルマ作りのカローラクロス池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2021年10月04日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 さて、では何一つ取りこぼさないその総合力勝負のカローラクロスで、美点を1つだけ選んで述べよといわれたら、それは多分シートである。何というか、「こないだまでのトヨタのシートは何だったんだ。こんなに早く良いシートが作れるようになるものなのか」と首を傾げるくらい良い。C-HRですらそれ以前のトヨタと比べたら長足の進歩といえたが、もはやそれとも全然違う。多分、トヨタ車最良だろう。それだけでも価値は高い。

トヨタ最良の出来といえるカローラクロスのシート。骨格そのものはC-HRと共用だが、腰の後ろのサポートがしっかりして背中が丸まらなくなったことが大きい。また表皮の張りの付け方が上手い

 1つという約束を破っていいのであれば、ハンドリングも挙げられる。GA-Cプラットフォームは、基本的に高負荷域のハンドリングが良い。スポーティなのだ。サーキットでカローラスポーツに乗った時の印象をありありと覚えているのだが、このカローラクロスも血は争えない。今回は公道の試乗なので、タイヤを鳴らすような無茶は一切していないが、高速での車線変更で少しアクセルを踏み込んで舵(かじ)を入れるとその片鱗(へんりん)は明瞭に分かる。むしろタラッと走っていると、そういう雰囲気を伺わせない平和なクルマなのだが、実は結構な足捌(さば)きを秘めている。

 C-HRとの住み分けのためには、ユーティリティも頑張らないといけない。リヤシートを畳まずにゴルフバッグが4つ積めるとか、6:4分割のリヤシートを畳めば前輪を外したロードバイクが積めるとか、足先のモーションでテールゲートが開け閉めできるとか、エンジニアってのは大変だなとつくづく思う。コストが上がっていいなら何でも付けられる。どれを頑張って、どれを我慢するかの判断は簡単ではない。多分ずっと、CセグSUVのファミリーカーとは何かを問い続けないとならない。

このサイズのSUVでロードバイクを積めるクルマは少ない。ポイントはシート折りたたみ時にラゲッジの床面をツライチにしていないところ。かさ上げしていない分深いので、前輪さえ外せば、自転車を立てて収容できる

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