クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタSUV陣の最後の駒 玄人っぽいクルマ作りのカローラクロス池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2021年10月04日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 同じCセグのC-HRはスペシャリティで、室内空間のしつらえはクーペのそれ。だから本当に家族で乗る乗用車、それはつまりカローラなわけだけれど、セダンが売れない昨今、その現代的解釈としては、そりゃSUVの仕立てになるのはもういわずもがなの話であって、だからつまりカローラクロスはトヨタのファミリーカーど真ん中にある。

 総合力がスゴいってのはどういうことかといえば、例えば燃費だ。ヤリスハイブリッドは、筆者が房総半島を一周走ってリッター33キロ走った。ヤリスクロスは東名で名古屋まで往復してリッター25キロ。意外にも大きいその差は、前面投影面積と重量と空力、それにタイヤである。ところが今回のカローラクロスは、三浦半島先端の三崎漁港までの往復で、高速主体というハイブリッドには少々不利な状況でリッター26キロ走ってみせた。ちなみにWLTCで26.2キロなので、ほぼカタログ値を出している。

 先に書いた通り、C-HRと同じシャシーを使うカローラクロスは、C-HRとバッティングを避けるために、クーペ的な室内空間方向には振れない。空間をたっぷり持たせないと住み分けられないのだ。だから、きっちりルーフを伸ばして、しかもあまりスロープさせずに後方まで引っ張っている。天井も高い。しかもタイヤはミシュランで、極端に燃費スペシャル系のタイヤではない。どこから見ても、燃費ではいろいろと不利なのだ。バランスの良いファミリーカーであろうとすれば、燃費のためのしわ寄せは何ひとつ、そしてどこにも寄せられない。条件が厳しいのだ。

トヨタのGA-Cプラットフォームは2015年に現行プリウスと共にデビューした。TNGA第一号シャシーである

 それが同一条件ではないとはいえ、小さく軽いヤリスクロスを燃費で上回っている。今時のトヨタハイブリッドの強烈な燃費性能を基準に考えれば、26キロは「割と良いね」くらいに聞こえるかもしれないが、条件をいろいろ勘案すると、「おいおい、何だその数字は?」というくらいに驚いてもいいはずである。価格も含んで、あれこれを途轍(とてつ)もないバランスで引き上げているという意味で、筆者はこのクルマを化け物だというのである。

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