西武HDの「外資にホテル売却」が、“残念なニュース”でない理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2022年02月08日 09時43分 公開
[窪田順生ITmedia]

 西武ホールディングス(以下、西武HD)が、プリンスホテルなど30施設をシンガポールの政府系ファンドへ売却するという報道があった。これを受けて、ネットやSNSではネガティブな反応を示す人が多い。実際、ニュースのコメント欄を見てみると、こんな不安の声が多く寄せられていた。

「日本の資産や人材がどんどん海外に流出していく、もう日本の衰退に歯止めがかからないのか」

「一等地の不動産を手離さなくてはいけないほど追いつめられているとは、西武ライオンズも危ないのでは?」

「売るにしてもなぜ日本企業が手をあげない! とにかく中国資本の手に入らないことを願うばかりだ」

「ザ・プリンスパークタワー東京」も売却されると報じられた(出典:ザ・プリンスパークタワー東京のInstagram)

 長引くコロナ禍で、値上げだ廃業だと景気の悪いニュースばかりなので、このように受け取ってしまうのも当然かもしれないが、そこは安心していただきたい。

 もし今回の報道が事実で、プリンスホテルが外資に売られることがあっても、それは「日本の衰退」と全く関係がない。さらに言えば、「ひとつの時代が終わった」なんて感傷に浸るような話でもなければ、「中国資本が買い占めたらどうしよう」なんて不安になるような話でもない。

 むしろ、これは「喜ばしいニュース」と言っていい。プリンスホテルが世界的ホテル運営企業へ成長していくためには、これらの施設の売却は避けることができなかった。コロナ禍があってもなくてもその路線は変わらない。そこへようやく西武HDが踏み込んだというのは決して“残念なニュース”ではないのだ。

 と言うと、「日本の土地や建物が外資に買われて喜ぶなんて、さてはこいつは中国や韓国の手先に違いない!」と怒る人もいらっしゃるかもしれないが、日本の水源、山林、文化財、そして自衛隊基地近くの土地など安全保障上、重要な土地や建物に外国資本が入ることは、絶対に許すべきではないのは筆者も全く同感だ。

 が、「ホテル」に関してこれはあてはまらない。この世界では、プリンスホテルのような大手企業は、「ホテルを所有せずファンドや投資家に売っていく」を繰り返して成長していくのが常識だからだ。

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