西武HDの「外資にホテル売却」が、“残念なニュース”でない理由スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2022年02月08日 09時43分 公開
[窪田順生ITmedia]

星野リゾートは「運営」に特化

 という話をすると決まって、「日本には日本のやり方がある!」とか「ホテルをしっかりと所有することで経営が安定して雇用も守れるのだ」とかなんとか言って、日本式経営を正当化したがる人たちがいるが、この日本においても、ホテルの「所有」と「運営」をしっかりと切り離したほうが、ホテルのサービスや施設の質が上がって成長に結びつくことは、ある「ホテル運営企業」が証明している。

 もうお分かりだろう、星野リゾートだ。

 ご存じのように、コロナ禍で観光業界が大打撃を受ける中で、星野リゾートが運営する主要ホテルは「1人勝ち」と揶揄(やゆ)されるほど、高い稼働率をキープした。20年7月時点で80%以上に戻り、3度目の緊急事態宣言が発出されるまで90%台を保ち続けた。

コロナ禍にもかかわらず、星野リゾートは高い稼働率を維持。画像は、代表の星野佳路氏(写真提供:星野リゾート)

 星野リゾートは、経営破綻した老舗旅館やリゾートなどの再生に次々と乗り出すが、そこでかつて「西武王国」がやったように、土地や建物を次々と丸抱えしていくなんてことはしない。あくまで「運営」に特化している。

 そのためよく「ホテルの所有と運営を分離したことが、星野リゾートの強みだ」とか言われるが、これは何も星野リゾートが発明したものではなく、世界で40年前からやっていた当たり前の手法で、そこに頑なに背を向けてきたことが、日本のホテル業界の苦境につながっている部分もある。

 このあたりは星野リゾート代表の星野佳路氏も指摘していて、日本に外資系ホテル運営会社がどんどん進出してきている背景について、このような分析をされている。

 『ホテル運営会社の誕生は、ホテルを運営せず所有できるという時代の到来を意味し、これはホテル産業への投資が進むきっかけになったのです。所有はそれを専門とする投資家に任せ、ホテル会社は運営に特化するというパートナーシップは、ホテル経営の生産性を格段に高め、過去40年間、産業の成長を実現してきました。しかし日本では、土地や建物を所有しながら運営も手掛ける事業形態がその後も長く主流であり、その結果として近年、外資系ホテル運営会社が次々と日本に進出してくるチャンスをつくってしまったと考えています』(ダイヤモンドオンライン 2021年5月20日)

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