リテール大革命

ENEOSが「モス」や「サイゼ」を自動配送 1万3000カ所の給油所活用で目指す姿とは自動走行ロボットの輸送インフラを構築(4/4 ページ)

» 2022年02月15日 06時00分 公開
[太田祐一ITmedia]
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課題は法規制とビジネス面

 「自動宅配ロボットの法制度は、これから整備されていくような状況。公道を縦横無尽に走り回るまでにはかなりのハードルがある。そのため、実証実験を通して実績を積み上げていき、規制改革を訴えていきたい。法規制が緩和されるまでは、走行可能なエリアやサービスにフォーカスして進めていく」(片山氏)。

 加えて、ZMPロボライフ事業部の池田慈氏は「法規制がたとえ緩和できて自動宅配ロボットが公道を走れるようになったとしても、その光景を住民が受け入れられるのかという課題がある。そうした社会受容性を高めていく取り組みは、ロボットメーカーとしてもやっていきたい」と話した。

ロボット 公道を走るデリロ

 ビジネス面について片山氏は、「ロボットが一般的な普及価格になっていないので、稼働率を高めながら、さまざまなサービスを1台で賄えるようなサービス設計を見つけていく必要がある。実証実験では配送料のみで運営するが、実際にプラットフォームビジネスとして行っていく段階では、店舗側から手数料をいただくと思う」と話す。

 また、中山間地域に住む高齢者のなかには、近くに店舗が存在せず、交通手段もないことから買い物難民になっている人が数多く存在する。宅配サービスはそうした課題を解決する一助になることも期待されている。

 片山氏は「買い物難民を救う面では、本事業も有意義なサービスになると思う。しかし、住人が少ないので稼働率は非常に少ないことが予測される。今回のモデルをそのまま適用しても、ビジネスモデルをうまく構築できないのではないか。例えば、高齢者の見守り機能といった別の付加価値をつけて展開する必要がある」と言及した。

ロボット 商品を積み込む様子

 同実証実験は2月28日まで実施する予定。実証期間中に検証した稼働率(注文数)を参考に、事業化フェーズに移行するかどうかを今年度中に判断。定常サービスへの移行は次年度を予定している。

 世界中で、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素化」の流れが加速し、電気自動車需要の拡大が続いている。全国1万3000カ所のネットワークを活用し、「脱石油」に向け新たな事業を展開できるか。石油元売り大手ENEOSの今後の動きに注目だ。

著者プロフィール

太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)

1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。

その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。

2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329

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