近年よく聞くようになったセールスイネーブルメント(Sales Enablement)。営業組織が、成果に向かって持続的に成長できるようにする取組みを指す言葉だ。米国では取り組む企業が増えており、今後日本でも市場が伸びていくことが予測されている。本連載では、ブレーンバディ代表取締役の大矢剛大氏が、日本の企業におけるセールスイネーブルメントの取り組みを調査し、紹介していく。
ベルフェイスが提供するオンライン営業システム「bellFace」は、電話中に手軽に通話相手とPCやスマホの画面を共有できるシステムだ。同社の営業部にとって、コロナ禍は逆境となった。多くの人がWeb会議システムで商談をすることに慣れ、競合は増え、電話商談の機会が減ったからだ。
そんな中、セールスイネーブルメントに取り組んだことで、受注率は最も低かった時から約10倍になったという。一体どんな取り組みを行っているのだろうか。
ベルフェイス営業副本部長で、2021年からセールスイネーブルメントの組織を管掌する市川大記さんを取材した。
──べルフェイスがセールスイネーブルメントに注目した背景を教えてください。
きっかけは20年の下期で事業計画が未達だったことです。
それまでベルフェイスは順調に成長しており、商談数に応じて人員を配置すれば売り上げが上がるという成功パターンがあったので、商談数やリソースを重視していました。
しかしその成功パターンが、21年にパタリと消えてしまったんです。成功の方程式が崩れてしまって事業が成り立たない、営業プロセスもマーケティングも全て変えなければいけない──という危機感を持ちました。
──未達になってしまったのには、どのような要因があったのでしょうか?
さまざまな要因がありますが、一番大きいのは市場の変化ですね。コロナで受注率と解約率が悪化したことが主な原因です。
Web商談やオンライン営業をやったことのなかった方でも、ZoomやMicrosoft Teamsを利用し、商談を行うことが増えました。顧客に負担をかけない「簡単な接続」という点に強みを持っていたbellFaceは、他のツールが一般化してきたことにより、その強みが薄れてきてしまったのです。
オンライン営業の領域でオンリーワンだった当社に対し、市場の競合が増えました。これまで機能に魅力を感じて導入していただくケースが多かったのですが、機能だけでは売るのが難しくなりました。
そこで21年は、受注率を上げ、最適な人員を確保しつつ、営業スキルを高めることに対して注力することにしたのです。
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