新時代セールスの教科書

コロナ禍で成功パターンが消えた──逆境のベルフェイスを「受注率10倍」に導いた秘策先駆者たちの「セールスイネーブルメント」(3/3 ページ)

» 2022年02月25日 07時00分 公開
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初めは社員も戸惑ったものの、自然と成果が出始めた

──営業部社員にとっては今までやらなかったことへの負担が増えます。批判などはなかったのでしょうか?

 最初は当惑していた雰囲気はありました。しかし実際にやってみたら「全然考えが浅かった」「顧客の潜在的な課題を把握するきっかけになった」などとリアクションをもらいました。

 言語化することで自身の考えの至らなさに気づいたり、他者からサジェストをもらうことで次回商談での準備内容が変わったり。運用すると成果が出始めたので、自然と「やったほうがいいかもしれない」という気持ちが生まれたのではないかと思います。

──導入してからはどのくらいで効果が出てきましたか?

 2〜3カ月ほどでしょうか。3月頃に戦略を固め、4月以降から実施、6月後半あたりにようやく数字として現れてきました。受注率が高まってきて、仮説としておいていたターゲットも間違ってないと確信が持てました。

 もともと課題として抱えていた「受注率」は、最も低かった頃に比べて良い時で約10倍上がりました。ターゲットを変えたことによりリードタイムは長期化傾向にあるものの、生産性はかなり上がりましたね。

──ターゲットをフォーカスし、運用をフォーマット化したことが、結果につながったのですね。

 はい。半年間で徐々にメンバーの思考や話す内容も変わってきたように思います。

 商談中、一方的に商品の機能を話すのではなく、お客さまがどういう経営課題を持っているか理解した上で、その課題に対してどのように解決していけるのかを考え、提案できるようになりました。

2022年は、市場を広げていきたい

ベルフェイス営業副本部長、市川大記さん

──経営と現場の間に立つ、ハブとしての役割を担う市川さん。経営側から現場の意図をくみ取るのは難しいと思うのですが、何か心掛けていることはありますか?

 今でも週に2回以上は、商談同席をし、お客さまから直接課題をお聞きしたり、bellFaceへのフィードバックをいただくようにしています。それは戦略を考える上で、お客さまの顔を浮かべる必要があるからです。「A社さんはこうで、Bさんはこう」など、常にパッとバイネームで社名が出てこなければ危ない。

 ビジネスは現場で発生する“お客さまとの接点”でしか動かないと思っています。現場を知らなければ、ビジネスを動かすための戦略も、ただの机上の空論です。メンバーがお客さまとどのようにコミュニケーションをとっているのか、商談の場に立ち会わずして語る資格はないと思っています。

──戦略を練るために現場を知る。そのために自ら現場に立ち会い続けているのですね。

 そうですね。あとは各現場にメッセージを発信する際に、いかにその言葉に納得性を持たせられるかは重要だなと。

 僕がメンバーだったら、現場のことを分からない上司に何を言われても、言うこと聞かないですもんね。「お前は何も知らないじゃないか」と。

 お客さまの成功のために現場で泥臭くやっている人が心から話しているのか否かで、メンバーの納得度が変わります。

──セールスイネーブルメントは長期的な目線で取り組んでいかなければならないものだと思います。今後について考えていることがあれば教えてください。

 これまでの成果を踏まえ、購買可能性の高いお客さまにさらにフォーカスすると同時に、営業スキルを高め、受注率を高めていきたいです。

 現状のbellFaceにおける成果を最大化することはできてきたので、今後はプロダクトが進化していく中で、市場を広げる動きをとっていきたいと思っています。

著者:大矢剛大(ブレーンバディ代表取締役)

大学卒業後、新卒で入社した株式会社マイナビを経て、株式会社リクルートキャリア(現:株式会社リクルート)に転職。リクルートキャリアでは、最優秀新人賞、MVP、アワードなど複数受賞。また、自組織から表彰者も多数輩出させた。その後、HRスタートアップに事業責任者として創業から携わり、事業立ち上げや営業組織の構築を行う。2020年に独立し、複数企業の営業コンサルティングを行う。

2021年4月に本格的にセールス・イネーブルメント事業を行うべく株式会社ブレーンバディを設立。代表取締役に就任。

Twitter:@YoshihiroOya

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