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井の中の蛙「コロナ感染、菓子折りで謝罪せよ」――日本のおかしな組織文化沢渡あまねの「脱アナログ庁」(3/3 ページ)

» 2022年03月10日 07時00分 公開
[沢渡あまねITmedia]
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「井の中の蛙」な組織にならないために

 このような前時代的な価値観から抜け出せない職場、公私混同甚だしい理不尽な慣習が色濃い職場、改善をしようとしない職場に対して、仕事に意欲的な人ほどモチベーションを下げる。

 「ワークエンゲージメント」という言葉がある。組織や仕事や仲間に対するつながりの強さ、すなわち帰属意識、愛着、誇りなどを意味する。

 プロとしての成長意欲が高い人、家事や育児や介護など制約条件がある中で職場でもパフォーマンスを発揮したい人、学校に通いながら複業しながらなどほかにやりたいことがある人であればなおのこと、「本業に関係のない雑務」をすることでエンゲージメントが下がる。

 「テレワークだとコミュニケーションがうまくできない(だから出社に戻す)」といった対応も、やる気のある人、正しく成長したい人のエンゲージメントを下げる。

 彼/彼女たちはただ単に出勤させられるのが嫌なわけではない。IT技術を使いこなそうとしない、新しいやり方を取り入れようとしない、仕事のやり方や組織カルチャーを変えようとしない経営陣や管理職に対して「情けない」と幻滅し、「この会社大丈夫か?」と危機感を持つのである。

 旧態依然の組織カルチャーで、本来正しく活躍できるはずの人を遠ざける。これはダイバーシティー&インクルージョンの観点からも大いに問題である。

 日本のレガシー組織よ。そろそろオトナになろう。仕事をする場に、プライベートの雅なしぐさを持ち込みすぎる組織カルチャーからいい加減卒業しなさい。

 多様化が進む時代、固定化した価値観や組織慣習は活躍できる人材や意欲的な人材を遠ざける。流動性のない組織、陰湿な組織は「ムラ社会」と化し、やがて過疎化が進む。

 それは地域社会においても企業組織においても同様である。同じ組織しか知らない、プロパー人材が主流派を占める閉鎖的な企業も問題である。外を経験する「越境学習」も取り入れ、組織カルチャーとスキルの健全化を促していきたい。

 井の中の蛙集団は、組織を停滞から衰退に導く。

図:「そ:外を知らない井の中の蛙たち」出典:『職場の問題かるた』(技術評論社刊/作:沢渡あまね/絵:白井匠/声:戸松遥)

著者:沢渡あまね

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作家/ワークスタイル&組織開発専門家。あまねキャリア代表取締役CEO、なないろのはな取締役(浜松ワークスタイルLab所長)、NOKIOO顧問ほか。350以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書『新時代を生き抜く越境思考』『どこでも成果を出す技術』『バリューサイクル・マネジメント』『職場の科学』『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』『IT人材が輝く職場 ダメになる職場』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』ほか。#ダム際ワーキング 推進者。


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