「水と電気を使用するものの、ランニングコストはそこまで高くないと考えています。お風呂1杯分(200〜250リットル)の水で再生できる再生紙の枚数は約1250枚。1枚の再生紙を作るのに0.3〜0.5円ほどの水道代と電気代がかかる計算です」(長田氏)
確かにランニングコストが高すぎるということはなさそうだ。しかし、製紙工場から紙を購入するより安いのか? というと、答えは「NO」。機械の購入費やメンテナンス費用などを考慮すると、製紙工場から購入したほうが安いのだ。
そのため、現在の導入数は10社ほどにとどまる。ここ2年は停滞していたものの、サステナブルな取り組みに熱心な企業や自治体、リサイクル業者などからの問い合わせが少しずつ増えてきているという。
「レコティオは”環境機”です。紙を新たに買ってしまう方が安く済むのは間違いないですが、環境保護などを目的とした企業や団体からの問い合わせは徐々に増えてきています」(長田氏)
シュレッダーの役割を担い、環境にも配慮した同商品だが、ペーパーレス化の勢いにのまれて行ってしまうのではないか? という将来に対する不安も残る。
2021年12月、海外ではドバイ政府が公式Twitterにて「ドバイ政府が完全ペーパーレス政府になった」と発表。ドバイ政府は18年から「ドバイ・ペーパーレス戦略(Dubai Paperless Strategy)」を推進していた。
宣言によると、ペーパーレス化の成果としてドバイの全45の政府機関で合計3億3600万枚以上の紙が削減されたという。また、1400万時間に及ぶ労働時間の削減と、13億アラブ首長国連邦ディルハム(約408億円)の経費削減につながったことを明らかにしている。
海外ではこのように思い切って紙の使用量をゼロにする構想を立て、実行している政府もいる。今後、こういった流れは世界的に加速していくと推測される。
そして、日本でも「紙の使用量削減」「労働時間の削減」「経費削減」などを目的に政府や企業がペーパーレス化を推進している。このような動きに対して、同社はどう考えているのだろうか。
「紙を減らそうという動きは顕著になっているものの、紙がなくなることはないと考えています。それは、紙の視認性の高さや脳への情報の入りやすさが挙げられます。紙とデジタルが共存できる形が好ましく、ペーパーレス化といえど、デジタルで代替えできない場面はあると思います」(長田氏)
日本製紙連合会の調査によると、19年の日本の紙・板紙消費量は202.7キログラムで、世界6位。世界平均が54.6キログラムなので、約4倍にあたる計算だ。日本は紙消費大国といっても過言ではないだろう。同様に、日本の古紙利用率(繊維原料投入高に占める古紙の構成比)は65.0%で世界トップレベルといわれている。
レコティオで再生紙を作る際の原料は「投入した古紙と水のみ」。そう考えると、レコティオ導入により古紙利用率は100%に達する。現在は、あくまでオフィス内の話にとどまるものの、今後日本のリサイクル業界に少なからず影響を与えるかもしれない。
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