日本のホテル市場の回復は世界に遅れるのか 回復速度の違いが拡大ニッセイ基礎研究所の分析(2/5 ページ)

» 2022年03月19日 07時00分 公開
[ニッセイ基礎研究所]
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1――2022年の世界のホテル市場は2019年の水準に迫る見通し

 世界ではホテル市場において徐々に明るい展望が見えてきているようだ。世界旅行産業会議(WTTC)は、2022年は世界中で旅行制限が緩和され始めており、トラベル・ツーリズム業界のGDPへの寄与額は8.6兆ドル(世界全体のGDPの10.4%、2019年比▲6.4%)とコロナ禍前の水準に迫り、同業界の従事者は3億3千万人(2019年比▲1%、2020年比+21.5%)に達すると推計した。

 また、国際航空運送協会(IATA)は、「新型コロナウイルス感染症は、感染爆発の段階から風土病の段階へと移行した」として、各国政府に渡航禁止令の緩和を呼び掛けている。

 また、新規投資も積極的に行われている。ヒルトン、デュシタニ、バンヤンツリー、IHGなど外資系高級ホテルが京都に高級ブランドのホテルを次々と公表している。「日本には高級ホテルが足りない」「日本のホテル価格は欧米と比べて安い」などの声も聞かれ、強気の投資姿勢の模様だ。

2――世界の外国人観光客数の回復状況

 国連世界観光機関(UNWTO)の公表によると、2021年の全世界の外国人観光客数は2019年比で▲72%とまだまだであるものの、やや回復した。地域別で見ると、ヨーロッパが▲62%と最も客数が回復しており、次いでアメリカ大陸▲63%、アフリカ▲74%、中東▲79%、アジア太平洋は▲94%なった(図表1)。アジア太平洋の悪化が大きいのは中国市場への依存度の高さが原因とみられる。

 外国人観光客数のエリア別の回復状況の違いは、各エリアの受け入れ態勢に影響されている面も大きい。また、外国人観光客の受け入れ態勢は、政府規制による国内の移動可否と強い関連性があると思われる。いまだコロナ関連規制が強いアジア太平洋エリアを拠点とするホテルグループより、規制が緩和されつつある欧米を拠点とするホテルグループのほうが収益も回復しやすい状況である。

photo 図表1 外国人観光客数(エリア別、2019年比)

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