一方で、国内ブランドの業績は芳しくない。藤田観光は2019年から、プリンスホテルと阪急阪神(ホテル部門)は2020年から2年間、東横イン、ホテルオークラ、相鉄グループ(ホテル部門)は2021年から赤字となっており、昨年から今年にかけて、いずれのブランドも業績が悪化している(図表2)。
原因には、2020年東京五輪開催時に期待された収益が五輪延期後もほとんど得られなかったこと、増加する観光客を期待していた新しい施設の建設費用、人件費などが重なったことがあるだろう。収益の消失に対し、いずれも削減が難しい費用であり、各社の経営を圧迫しているとみられる。
業績の低迷から、保有資産を圧縮して経営効率を高めようとしている企業も多い。2022年2月、プリンスホテルがシンガポール政府投資公社(GIC)に30施設を売却することとなった。2021年2月に藤田観光が大阪の大型宴会場であった太閤園を創価学会に売却し、同年3月には近鉄グループが8つのホテルを米ファンドのブラック・ストーンに売却している。
国内ブランドのホテルは国内ホテルの保有比率が高く、国内ホテル市場の影響を強く受ける。一般的に、コロナ禍前の状況に戻るまでには「(1)日帰り旅行の増加」「(2)近距離旅行の増加」「(3)遠距離旅行の増加」「(4)海外旅行の増加」の各段階の順といわれているが、今はどの段階だろうか。
訪日外国人客数は2019年同月比で▲99%前後の月が続き、「(4)海外旅行の増加」の段階ではない。また、2021年12月には2019年同月比で▲15.6%(うち国内旅行客数は+4.0%)まで回復し、「(1)日帰り旅行の増加」の段階は脱しているようだ(図表3)。
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