ロードスター990S 7年越しの回答池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/7 ページ)

» 2022年03月14日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 マツダのアイコンともいえるロードスター。マツダにとってはもちろんのこと、世界中のファンにとっても特別なクルマだ。

 2015年にデビューした4代目のNDロードスターが大きく進化した。すでに評判はお聞き及びの事と思う。あっちの記事でもこっちの記事でももはやちょっとしたお祭り騒ぎといってもいい。10年に1度。いやそれ以上の高評価である。一体何がどう変わったのか?

 走りが素晴らしくなった……のは事実で間違っていないが、もっと戦略的な意味があるのだ。もう少し俯瞰的に全体図を見てみよう。

NDロードスターの原点回帰を成し遂げた新モデル「990S」(右)

NDロードスターの思想

 そもそも、NDロードスターのコンセプトは原点回帰であり、その意味するところは原初のNAロードスターに対して、わがままなマーケットの要求で少しずつ加えられてきたさまざまな余剰を、原点に立ち返って一度削ぎ落とすことでもある。

 重要なポイントだけに絞れば、それは衝突安全対策のために増えた重量をカバーする排気量拡大の見直しが一つ。もう一つは世界的なヒットによる、より速度レンジの高い国で求められる動力性能の向上と、高速旋回時のスタビリティ確保の弊害対策である。問題は、NDがデビューしたとき、すでにRX-7もRX-8も消えており、そのニーズを補うことが求められていたところにもある。

 ロードスターは英国のライトウェイトスポーツカーであるMGの系譜に連なるクルマであり、RX-7はミドルスポーツカーであるポルシェ924の系譜に連なるクルマだ。コンセプトが生まれた年代も、発祥国の環境も違う。本来両方の性能を求めるのは無理難題である。

 多様な社会・顧客ニーズに応えるための足し算をしていった結果、マツダはついに、3代目であるNCの先に、ロードスターとしての新しい延長線を描けなくなった。今までの足し算方式の行き止まりである。これ以上、動力性能を上げ、高速型に振って行くとルビコン川を渡ってしまう。そういうクルマは否定しないが、本来そこはRX-7の受け持ち領域である。

初代ロードスターNAのSスペシャル
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