ロードスター990S 7年越しの回答池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/7 ページ)

» 2022年03月14日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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ベストオブND

 最後に蛇足みたいなインプレッションで申し訳ないが、第一印象はとにかく自在感が増した。スルリスルリとスムーズに曲がり、とても気持ち良い。元々が高レベルであったので、悪かったところが良くなったというよりは、まだ上があったのかという感じである。

 どんなクルマでもそうだが、ロードスターもまた、速度レンジを上げていくと、路面によってはボディを押さえるダンピングが少し不足して、お釣りが増えてくる感じがあり、そこから先は気持ち良さに陰りが見えるので「あ、ここまでだな」と思って、その範囲で走ることになっていた。その幅が明らかに広がり、スイートスポット限界の頭打ち感がなくなった。

 さらに乗り心地が良くなっているのもこのクルマの性格にとっては大きい。全体的に体が軽くなった印象を受け、心なしかキャラが少し明るくおおらかになった。多分さまざまなセッティングの玉突きで、少しだけ犠牲になっていた直進安定性も良くなっている。

軽量化のためにナビは付かない。スマホに頼るという割り切りだ

 控え目にいっても990SはベストオブNDだろう。ただまあ人によって求めるものは違うので、最終的にはオートマのRFを買う人もいるとは思う。しかもややこしいことにロードスターの中では「重いクルマ」の代名詞のようになっているRFですら、そこらのスポーツカーより軽い。だからいろいろな選択肢があってどれも間違いではないのだが、そのどれを選ぶ人であっても、多分990Sに否定的スタンスを取ることはないと思われる。筆者も取材での長距離移動を考えないなら──それは最新のアダプティブクルコンが手放せないという意味だが──とても欲しい。2台買う甲斐性があるなら、これを選ばない手はない。

 ちなみに、ナビは標準はおろかオプションでも付かないので、スマホのナビに頼るしかない。ナビを付けようとするとハーネスの重量増加が洒落にならないのだという。なので、スマホナビでOKという人でないとダメかもしれない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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