業界トップの「イセ食品」に衝撃! なぜ卵のように転がり落ちたのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2022年03月15日 10時13分 公開
[窪田順生ITmedia]

「日本型拡大路線」が破綻

 過剰生産を続けるためには、餌代も設備投資もそれなりにかかる。さらなる効率化を目指して、養鶏場の大規模化も進めなくてはいけない。しかし、消費者は減っているし、過剰生産状態なので価格は上げられないのでどんどん“うまみ”は減っていく。つまり、日本の鶏卵業界が昭和から続けてきた「たくさん生産して、安い価格でたくさん売る」というビジネスモデルが、人口減少によって崩壊に追い込まれつつあるのだ。

 このいわば「拡大路線の限界」こそが、業界ツートップを「転落」させた原因ではないかと個人的には考えている。

「たくさん生産して、安い価格でたくさん売る」というビジネスモデルは崩壊

 まず、イセ食品が資金繰りに行き詰まったのは、世界的な原料費高騰うんぬん以前の問題で、「拡大路線を続けてきたが、近年は業績が低迷して過剰債務に陥っていた」(日本経済新聞 3月11日)という指摘が多い。

 なぜかというと、9年で150万人の消費者が減っていくこの国で、イセ食品は果敢に「拡大路線」に挑んでいた。13年から豊田通商と提携を結び共同出資で、鶏卵の生産供給事業会社を茨城や福岡に次々と設立。コロナ禍に入ってからもその勢いを止まらない。

 『静岡県富士宮市の富士山麓に新たな養鶏農場を建設中だ。敷地内にはパック包装工場も併設。完成後はグループ全体の養鶏数が国内で1400万羽と1割程度増強される』(日本経済新聞 20年12月16日)

イセ食品は事業拡大にチカラを入れていた

 さらに、イセ食品では積極的な事業拡大もしていた。もともと養鶏場跡地で太陽光発電事業を進めていたところ、17年には石油大手フランスのトタルエナジーズ社と組んで石川県にメガソーラーを稼働させた。発電事業者となる特定目的会社には、イセ食品グループが50%出資している。

 また、イセ食品ではないが、元会長兼社長の伊勢氏も個人として果敢に「異業種参入」に挑んでいる。自身が全額出資する不動産会社を通じて、「1円セール」で知られる大阪の激安スーパー「玉出」を買収。伊勢氏は「十分に採算性を見込める」(日本経済新聞 18年7月3日)と述べて、経営のテコ入れに意欲を示していた。

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