なぜ群馬に“謎コンビニ”ができたのか ゼンショー「実験店舗」の正体スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2022年02月15日 09時56分 公開
[窪田順生ITmedia]

 ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショーHD)が群馬県内で4店舗展開しているコンビニ「さくらみくら便利店」(以下、さくらみくら)が謎すぎると話題になっている。

 「すき家」「はま寿司」など手広く経営する外食トップが、なぜこのタイミングでコンビニに参入したのか、そしてなぜ群馬なのか、ということで2021年6月に1号店がオープンしてからさまざまな憶測を呼んでいるのだ。

コンビニ「さくらみくら便利店」は2021年6月に1号店がオープン(出典:さくらみくら公式Webサイト)

 そんな「謎コンビニ」をめぐっては、2月14日の『デイリー新潮』が、「異質を求める需要」に応えるためではないかと分析している。ご存じのように、日本のコンビニはセブン-イレブン、ローソン、ファミマの3社による寡占市場。全国どこに行っても同じような雰囲気の店で、同じようなPB商品が並んでいる。このような「均一化されたコンビニチェーン」に辟易した地域住民に向けて、明確に差別化した「地域密着型コンビニ」を提案しているのではないかというのだ。

 実は筆者も「さくらみくら」のニュースを耳にしたとき、同じようなことが頭によぎった。群馬では18年に、長く県民に愛されてきた「セーブオン」が消滅して、ローソンに変わってしまった。「地域密着型コンビニ」の席が空いたところをゼンショーHDが目ざとく、グループ内の小売部門を活用して新たなビジネスを仕掛けたのかと思ったのだ。

 ただ、前出の『デイリー新潮』を読む限り、その可能性はかなり低くなったと感じている。その根拠は、ゼンショーHDのグループ広報に取材を申し込んだ同編集部への“塩対応”だ。

 『まだ実験中でして公表できる情報はないのです。弊社は小売りもやっているので、その延長ではあるのですが……。大手の3社さんに割って入って行こうという狙いがあるわけではないですし、今後、群馬県以外のところに展開するかどうかというところも、申し上げられません』(デイリー新潮 2月14日)

おにぎりの種類も豊富に用意している(出典:さくらみくら公式Webサイト)

 いくらテスト店舗でも、公式Webでは「全く新しいコンビニ」「桜の花のように地域に根差し笑顔を届ける存在になりたい」とうたっているのだから、事業目的やブランドコンセプトくらい明かすのが普通なのだが、ゼンショーHDはまるで「詮索するな」と言わんばかりなのだ。これはかなりおかしい。

 しかも、「何も申し上げられない」と言いながら、セブン、ローソン、ファミマというビッグ3に対して「お客さんを奪う気などさらさらありません」と明確に意志表示をしているのもかなり違和感がある。どんなに大手のコンビニと差別化をしたところで、地域内にコンビニを展開していくのならば当然、各社の出店戦略とバッティングする。それを否定するということは、コンビニ事業を本気で広げていくつもりがないと言っているに等しい。

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