なぜ群馬に“謎コンビニ”ができたのか ゼンショー「実験店舗」の正体スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2022年02月15日 09時56分 公開
[窪田順生ITmedia]

「中食」戦略の最前線

 となると、この実験はゼンショーHD側が自前でやらないといけない。つまり、自分たちでコンビニをつくって、大手コンビニほどではないにしろ、飲み物や菓子、生活雑貨などをそろえて、作り置きの弁当や総菜も並べる。そのように「本物さながらのコンビニ」という環境をつくったうえで、店内に「持ち帰り専門店」をつくって営業をするのだ。

 「持ち帰り弁当」ばかりを購入して、店内の総菜やパンには見向きもしない客がどれほどいるのか。持ち帰りの親子丼を購入した客は、コンビニの棚で何を一緒に買うのか。イートインスペースをどれほど利用するのか、など既存の大手コンビニでは絶対に得られない貴重なデータの宝庫である。

(出典:ゲッティイメージズ)

 そして、メリットとデメリットを徹底的に分析して、ビジネスモデルを構築した上で、セブンやローソン、ファミマに「提案」するのではないか。そんなゼンショーHDの「中食」戦略の最前線が「さくらみくら」のような気がしてならない。

 という話をすると、「セブンなどはゼンショーなどに頼らず、PB商品のように自前で持ち帰り事業を始めるのでは」と考える人もいるだろうが、それは現実的に難しい。

 もしセブンのコンビニで「みくら食堂」のようなことを自前でやろうとすると、設備や人件費がかさんで、ただでさえ高額なライセンス費を支払うコンビニオーナーの負担がさらに重くなる。コンビニバイトの確保だけでも大変なのに、調理スタッフのマネジメントや食の安全も守らないといけない。人手不足のブラック企業で働く人が、副業を始めるようなもので、「24時間営業問題」などコンビニの劣悪な労働問題が再び火を吹くだけだ。

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