なぜ群馬に“謎コンビニ”ができたのか ゼンショー「実験店舗」の正体スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2022年02月15日 09時56分 公開
[窪田順生ITmedia]

コンビニ内の持ち帰り専門店

 そう考えると、(3)の「『さくらみくら』は『持ち帰り弁当がメイン』という珍しい業態」というのもすべてつじつまが合う。

 実はこのコンビニの最大のウリは店内にある「みくら食堂」だ。24時間営業で「できたて弁当」や親子丼やうどんのテークアウトを提供するコーナーで、店内のタッチパネルのほか、電話注文も受け付けている。つまり、「さくらみくら」は「コンビニ内の持ち帰り専門店」を前面に押し出したコンビニなのだ。

 さらに注目すべきは、そのメニューだ。「みくら唐揚げ弁当」などの定番の弁当メニューに混じって、「ふんわり卵の親子丼」(480円)、「お出汁染みるきつねうどん」(390円)などがそろっているのだが、これは「なか卯」のテークアウトメニューの「親子丼 並盛」(480円)や「きつねうどん 並」(400円)とほぼ同じ価格帯なのだ。

 つまり、「みくら食堂」は、いずれコンビニ店内に進出させようと考える「なか卯」のテークアウト専門店のプロトタイプである可能性があるのだ。

 と聞くと、「コンビニが弁当でどれだけ稼いでいるかしらないのか、自分たちの稼ぎ頭を脅かすようなコラボをするわけがないだろ!」とツッコミたくなる人がたくさんいると思うが、だからこそ「実験」をする必要があるのだ。

王者セブンはどうする?(出典:ゲッティイメージズ)

 もしゼンショーHD側が大手3社に、このスキームを提案する際には当然、データが求められる。コンビニ内でテークアウトを展開することで、どれだけコンビニ側の売り上げに良い効果があるのか、新客を呼び込むことができたのか、そして、その逆に棚に並ぶ、コンビニ弁当にはどれほど悪影響があるのか――などのデータである。

 当たり前だが、セブン、ローソン、ファミマ側からすれば、そんなデータ収集のために協力をすることは、なんの得もない。世間的には話題になるかもしれないが、自社の中で「すき家に負けない品質の牛丼を」なんて日々がんばって商品開発をしているような担当者たちの士気を下げることにもなりかねない。コンビニのPB商品に携わる取引先に対しても、誤ったメッセージを送ってしまう恐れもある。

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