ブーム終焉……タピオカの“空き店舗”は今、どうなっているのか廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(3/4 ページ)

» 2022年03月16日 07時00分 公開
[廣瀬涼ITmedia]

 また、コロナ禍で一番増えた専門店は「唐揚げ」ともいわれている。調理コストが低く客単価が高いこと、ゴーストレストランとして本業の片手間に販売できること、などの理由でフードデリバリーに適しているからだ。作業スペースをそこまで必要としないため、新規唐揚げ専門店の多くに、皮肉にもタピオカの空き店舗が利用されていることも多い。

photo 新規の唐揚げ専門店が、タピオカの空き店舗を利用していることも多い=写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 一方、大手チェーン店以外の多くの専門店で、新メニューとして軽食やデザートを扱う店舗も増加した。中でも、豊富な台湾フードからタピオカに代わる看板メニューを模索していった。

 パンケーキなどを専門に扱う店舗では、専用の調理器具や、それを販売することを想定したキッチンのデザイニングがされている。そのため流行が過ぎた場合、パンケーキとあわせて何か新しいモノを販売するよりも、新しい専門店として開業仕直した方が効率がいい場合もある。しかしタピオカの場合、もともと高度な調理を伴わないため、店舗スペースに新規でフライヤーやコンロを導入すれば、タピオカとは別の何かを合わせて提供しやすいのだ。

 そのため、もともとタピオカ専門店だった店舗が食べ歩きフードとして親和性の高いクレープや、ブームの発祥の地である台湾フードを一緒に販売するケースも増えている。最近ではタピオカ専門店で「ダージーパイ」(大鶏排)を販売している店舗も増えているが、台湾フードという点とコロナ禍における唐揚げ専門店乱立という点、双方からみてもタピオカ専門店と親和性のあるメニューであると、筆者は考える。

タピオカの今後 存在感を増す大手ブランド

 平成の30年間をさかのぼるだけでも、さまざまなフードブームがあった。ナタデココやティラミス、カヌレなど一世を風靡(ふうび)したブームは今どうなっているのだろうか。

 言うまでもなく、全て市場に存在しており、ただ消費者が意識をしなくなっただけである。ブームはあくまでもブームであり、ブームが過ぎたからといってそのものが完全に消えるわけではなく、ファンに支えられて市場に残るのだ。簡単にいえば「定着」「コモディティ化」の段階をたどるわけであり、タピオカもそのフェーズにいる。

 零細専門店は撤退していく一方で、大手ブランドの「春水堂」や「Gong cha」(ゴンチャ)は、むしろ存在感を増しているようにも思われる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.