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» 2020年06月08日 07時00分 公開

開業から3カ月、成果は:「売れなかった」ハムサンド、カメラ50台で真相解明 高輪GW駅「無人決済コンビニ」の実力 (1/3)

高輪ゲートウェイ駅にオープンした無人コンビニ店舗「TOUCH TO GO」。無人化によるコスト削減に注目が集まる一方、データ活用という点でも大きな可能性を秘めている。約50台のカメラ映像を分析し「POS端末では分からなかったこと」が見えてきた。

[吉村哲樹,ITmedia]

 2020年3月14日に開業したJR山手線・京浜東北線の高輪ゲートウェイ駅。山手線の新駅としては約50年ぶりとなるだけに注目度は高く、開業初日には多くの観光客も訪れた。その一角で、注目を集めている店舗がある。AI(人工知能)技術を活用した無人コンビニ店舗「TOUCH TO GO」だ。有人レジはなく、来店客は店内で商品を手に取り、出口付近で「Suica」などを読み取り機にかざすだけで買い物を済ませられる。

photo 高輪ゲートウェイ駅にオープンした無人決済店舗「TOUCH TO GO」

 こうした無人決済店舗は、米国では「Amazon Go」をはじめ実用化された例があるが、日本では長らく実験段階にとどまっていた。そうした中、TOUCH TO GOは国内では珍しい実用化事例として小売・流通業界はもちろん、他業界からも高い注目を集めている。無人もしくは少人数で店舗を運営できるためコスト削減効果が大いに期待されているが、データ活用という点でも大きな可能性を秘めている。

 運営会社TOUCH TO GOの阿久津智紀社長は「POS端末では、決して得られなかった情報が見えてきた」と笑顔を見せる。無人決済店舗を実現するには、テクノロジーを駆使して店内の客の動きを把握し、決済処理を行う必要がある。これらを通じて集めたさまざまなデータは、単に決済処理に使われるだけでなく、業務改善やマーケティングにも役立つ可能性がある。事実TOUCH TO GOでは、開業して間もないにもかかわらず、既にさまざまな形でデータ活用が進められているという。

約50台のカメラが客を追尾 無人決済コンビニの仕組み

 高輪ゲートウェイ駅のTOUCH TO GOで使われている技術は、過去に大宮駅と赤羽駅で行われた実証実験で得た知見がベースになっている。店内には専用の3Dカメラが約50台設置され、入店した客を自動的に識別するとともに、その動きを認識・追尾する。店内の広さは一般的なコンビニ店舗より一回り小さく、客が棚から商品を取ると、客の動きをカメラが識別するとともに、棚に設置された重量センサーも反応し、どの商品が手に取られたかを自動的に認識する。

 商品を選び終えた客はそのまま、出口付近に設置された決済エリアに入る。すると、店内のカメラやセンサーが自動認識した商品の一覧とその値段がディスプレイに表示される。客はその内容が正しいことを確認したら、交通系ICカードによる決済を行う。

photo 客は店内で商品を手に取り、出口付近で「Suica」などを読み取り機にかざすと支払いが完了する

 これらの仕組みを開発したのは、JR東日本スタートアップとサインポストが2019年7月に共同で設立したTOUCH TO GOだ。同社の阿久津社長は次のように話す。

 「17年に大宮駅で初めて無人決済コンビニの実証実験を行った際には、店内で同時に認識できる人数はたった1人でした。その後、認識技術を少しずつ改善していった結果、18年10月に赤羽駅で行った実証実験では3人、そして今回の高輪ゲートウェイ駅では同時に10人まで認識できるようになりました。実証実験段階では100台のカメラを設置していましたが、カメラの認識率が向上したり、商品棚に設置していたカメラを重量センサーに置き換えたことでカメラの台数は半減し、大幅なコスト削減を実現しました」

 高輪ゲートウェイ駅店を開業した後も、カメラやセンサーの取得データを分析しながら認識率向上のためのチューニングを繰り返した。その結果、開業当初は75%ほどだった認識率が、その後2カ月ほどの間で約95%まで向上したという。これにより現在の店舗運営は、品出しや発注などの作業を行うスタッフが1人バックヤードに控えているのみで、売り場は完全に無人で運営している。

「売れた情報」だけでなく「売れなかった情報」も分析

 コンビニの売り上げを上げるには、売れ筋商品をいち早く把握・予測し、タイムリーに仕入れなければならない。そのためどの店舗も、POSデータを分析して売れ筋商品の傾向をつかみ、日々の商品仕入れに生かしている。同じくPOS端末を通じて集めた購買者の性別や年齢層といった属性情報もあわせて分析し、より売れ筋を詳しく予測しようと試みている。

 TOUCH TO GOでも、決済処理で得られる売り上げデータや、カメラの顔認識処理で取得した利用客の性別情報などを収集・分析し、売れ筋分析に生かしている。ただし利用客の個人情報に当たる情報は社内で一切保持せず、個人を特定できない形にサマライズした上で利用しているという。

 しかしTOUCH TO GOで取得できるデータは、それだけではない。従来型の店舗では決して取得できなかった「利用客が何を買わなかったか」というデータを取得・活用できるという。

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