毎年提供しているiPhone向けの最新OS(iOS)には、iPhoneの使いやすさや機能性、あるいは他アップル製品と連携するために必須となるアップデートが含まれている。それらの機能を、なるべく多くの顧客に知ってもらうことが長期的な戦略上、とても重要だ。
だからこそ「Face ID搭載のナンバーシリーズのモデルには変えたくない」という保守的なユーザーに対しても、定期的に(現時点では2年ごと)ベースラインとなるモデルにもアップデートを加えているわけだ。
これまでホームボタンを有するTouch ID搭載のiPhoneを愛用してきたユーザーにとって、慣れ親しんだ使い勝手の端末を、ほぼそのまま最新のシステムに移行できるSEの位置付けは、買い替えやすい受け皿といえる。
一方、アップルにとっては、端末の買い替えサイクルが長くなってきている中、保守的なユーザーを“新しいiPhoneの世界”に誘う端末だ。
最新SoCを搭載することで、新しいiOSが持つ機能をほぼフルに活用でき、カメラの機能や画質、機械学習を応用したさまざまなアプリ、あるいは機能も使えるようにできる。そして今後、数年間にわたって最新iOSへのアップデートも提供できる。
最新iOSの高い導入率は、アップルにとって大きな優位性になっている(ネットワークを通じた連携機能などを提供しやすいため)こともSEの重要性を高めている。
アップル自身は、全iPhoneシリーズの価格について、それぞれの位置付けを考慮した上で決めている。第3世代のSEの価格は、容量が同じ128GBで比較すると、iPhone 13 miniよりも2万円以上安い。そうした意味では購入しやすい価格で入手できるiPhoneであることは間違いない。
一方、ナンバーシリーズの端末も、iPhone 12シリーズ、iPhone 11シリーズまでが継続販売となっており、第3世代iPhone SEよりもSoCが古いとはいえ、それぞれほんの少しだけ予算を加えるだけで入手できる価格設定だ。
つまり消費者の視点では、第3世代のSEには「最新SoCを搭載しているので長期間、iOSの最新版が使えるだろう」という期待を持てる一方、より良いカメラやカラフルなカラー、大画面などが目的ならば、ナンバーシリーズの旧モデルを選ぶという選択肢もある。
そうした意味でも、iPhone SEは廉価版ではなく、ナンバーシリーズとは別の製品シリーズと捉えた方がしっくりくるだろう。
なお、実際の販売現場では、さまざまな条件がある。最新のiPhone 13 miniなどを極めて低価格に入手できるプランが、店頭のみで用意されているケースも見かけるようになってきた。とはいえ、安価に入手できる理由(契約内容など)がある。割引額が極端に大きな購入プランは、長期的にその価格差を吸収する計画があるからこそ、その価格になっていることを忘れてはならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング