このところ止まる気配のない円安は、日本の低金利が影響しているとみられる。日本円は、戦争といった地政学リスクの高まりや経済動向の不確実性が高まる局面を迎えると、「有事の安全通貨」として買われる傾向があったが、今回はその動きがみられない。
ウクライナ危機において地政学リスクが高まっている足元で、日本円は非常に弱含みな展開となっている。この点について、一見ウクライナとロシアの紛争といえば遠い欧州の出来事にもみえるが、実際はロシアと日本は隣接しており、北方領土問題も抱えている点で「遠くの戦争は買い」という相場格言も通用しない状況ということもあるだろう。そもそも現代では、核ミサイルをはじめとして地球上どこにいても戦禍は届き得る。現代において「遠くの戦争」はもはや存在しないといってもよいかもしれない。
しかし、最大の円安要因は、やはり日米金利差の拡大観測が高まっていることにあるだろう。3月3日のパウエルFRB議長によれば、米国の利上げペースがこれまでの0.25%刻みから、0.5%刻みも選択し得る可能性があるという。
その一方で、日本では量的緩和の縮小について全く見通しが立っていない状況だ。日銀の黒田総裁は22日の参議院予算委員会で出口戦略について時期尚早であると発言した。日本の政策金利は16年1月からマイナス金利政策が継続しており、今でも-0.10%で推移している。その一方で、米国では現在0.5%の政策金利を2.0%程度の水準まで引き上げる見通しだ。
米国債券市場では10年物の長期債利回りが2.33%で推移している一方で、日本国債の10年物の長期債利回りは0.23%と低調だ。幅にして2.1%分の金利差が、円をドルに交換する需要の元になっていると考えられる。
要は、「持っていても金利のつかない通貨は売られ、金利のある通貨が買われる」というキャリートレード的な動きが、日本円の対外的な価値が暴落している原因といえるだろう。
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