社内ベンチャー型で事業計画を立てる中、経営層から「みんなが”一度は着てみたい!”と思っているブランドの出品が決まらないと新規事業として許可できない」と告げられた。
「みんなが着てみたいと思うような憧れのブランドであればあるほど、ブランド力の維持を大事にしますよね。しかし、直感的に”買う”と”借りる”は相反するワードに聞こえてしまいます。その感覚を取っ払ってもらえるかがカギでした」(田端氏)
そこで田端氏は、サービスへの出品はブランドの購買層ではなく潜在層への訴求につながっていて、将来的にブランドのファンを作る活動だと説明。また、当時は高級アパレルブランド、バーバリーの大量廃棄問題により、アパレル業界がサステナブル消費に対する対応を求められ始めたタイミングでもあった。
環境省が21年に発表した調査によると、現在、ゴミとして廃棄されている洋服の量は年間約48万トンに上る。これは、大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしている計算だ。
「百貨店は大規模小売業としてモノを大量に生産し、消費するというサイクルを通じて成長してきました。現在はその体制が大きな社会問題になっている。アパレルと百貨店が手を組むことで、その構造を少しでも変えることができるのではないかとアピールしました」(田端氏)
ブランド側の経営層が感じていた「アパレル市場の縮小」や「サステナブルな経営」を支えるサービスとして納得してもらうことに成功。サービス展開時には50のブランドが出品者として顔をそろえた。
コロナ禍で、オシャレ着が必要になるような外出の機会は減少したものの、田端氏は「手の届く価格でファッションを楽しみたいという根本的なニーズは大きい」と推測していた。コロナ禍でファッションに対するダメージはあったものの、「かわいくありたい」「きれいでありたい」という思いはなくならない。その欲求に訴求できたことが、サービスの支持につながったと分析する。
アナザーアドレスは26年の目標として、売り上げ50億〜60億円、有料会員数3万人、在庫20万着を掲げている。また、今後はリアル店舗展開やサービス内で収集したデータを百貨店の店舗設計に反映させていく計画も動いているという。低迷を続ける百貨店事業を支える事業に成長できるか、この5年が勝負どころとなる。
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