Go Toの話を続けると、一休のユーザーと“相性”がよかったことも挙げられる。同社のサイトを見ると、取り扱っている宿泊施設は高級ホテルや老舗ホテルなど、ワンランク上のものが多い。東京の夜景を見ることができて1泊5万円、部屋に露天風呂が付いていて1泊10万円といった施設がズラリと並んでいる。
Go Toを利用した人の間で、人気宿泊施設はどんなところだったのだろうか。覚えている人も多いかと思うが、高級ホテルの予約がどんどん埋まっていった。割引が適用されるので、「せっかくなので、普段泊まることができないところにしようよ」といった人が多く、一部のホテルで“スイート待ち”といった珍しい現象が起きたほど。“Go To特需”を受けるような形で、このとき一休の取扱高はぐーんと伸びたのだ。
取扱高が伸びてよかったね、めでたし、めでたし。で終わればよいが、新型コロナウイルスは都合よく弱ってくれない。感染者が増えれば旅行者は減り、落ち着けば少し増えて、といった凸凹を繰り返していく。そうした状況の中で、どうやって「微増」の結果を残すことができたのだろうか。キーワードは「ファンづくり」である。
一休のビジネスモデルは、宿泊施設とユーザーをマッチングさせることである。いわば間にはさまれている立場なので、宿泊施設も相手にしなければいけないし、ユーザーも相手にしなければいけない。しかし、取扱高が伸び悩んでいたころの同社は、宿泊施設の“顔色”ばかりうかがっていたのである。
かつてのWebサイトを見ると、宿泊施設の広告が並んでいた。旅行好きな人がたくさん集まっているサイトなので、宿泊施設側は集客力を高めるために広告を出稿していたのだ。だが、しかしである。ユーザーの視点に立つと、「その情報っているの?」と感じた人も多かったようだ。
例えば、Aさんは「沖縄でマリンスポーツを楽しみたい」と思っていたとしよう。「どこかいいホテルはないかな」と探しているのに、表示されるのは北海道にまつわる情報ばかり。そこで「北海道もアリだな。函館でおいしい料理でも食べるか」と心変わりして、マッチングすることもあるかもしれないが、そうした人はやはり少ない。
沖縄に行きたいのに、北海道の情報が表示される――。こうしたミスマッチが散見されていたので、一休は大きくカジを切る。広告主が喜ぶことではなく、ユーザーが喜ぶにはどうすればいいのか。このことを考えて、動き始めたのだ。
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