累計270万個を突破! 消しカスを集める「マ磁ケシ」の開発秘話を聞いた週末に「へえ」な話(2/3 ページ)

» 2022年04月09日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

初代の課題を解決

 さて、ここまで読んでいて、数年前の記憶がよみがえった人もいるのではないだろうか。クツワは2018年に、磁力で消しカスを集めることができる「磁ケシ」(308円)を販売していて、今回のマ磁ケシはその“進化系”ともいえるのだ。

 磁ケシのことをよく知らない人のために、商品のことを簡単に説明しよう。磁ケシにも鉄粉が入っていて、ケースの底にネオジウム磁石を内蔵している。それを消しカスに近づけると、ススーっと集めることができるのだ。

2018年に「磁ケシ」を発売

 ここまでの機能は、進化版のマ磁ケシと同じ。当時、このような消しゴムがなかったので、「スゴい。便利すぎる」「こーいうのがほしかったんだ」といった声が広がって、シリーズの出荷累計は270万個を超えるヒット商品に。が、しかしである。

 消しカスをつけたままゴミ箱まで持っていって、カスを落とすか、机の上にティッシュなどを広げて、そこに落とす必要があったのだ。このことに不満を感じる人が多く、ネット上で「なんとかしてくれ」「逆に不便」といったコメントがでてきて、同社は「それならば、消しゴムの中にカスを回収することができる商品をつくればいいのでは」と考え、開発を進めることにしたのだ。

 完成品は磁石が上下に動くようになっているが、試作品では回転しながら上下に動くようになっていた。「なぜ、わざわざ複雑なモノをつくったの?」と思われたかもしれないが、この技術は一部のスタンプなどで使われていて、それを応用しようと考えていたのだ。ちょっとした仕掛けが施されているので、完成すれば、文具ファンにとってはたまらないアイテムになっただろう。

マ磁ケシは2021年10月に発売した

 しかし、ここで問題が出てくる。完成品のサイズと比べて、1.5倍も大きかったのだ。このサイズで販売しても、多くの小学1年生が購入するマグネット式の筆箱に入らないことが分かってきた。これではいけないということで、上下に動くいまの構造を取り入れることにした。

 できるだけコンパクトにしたいわけだが、サイズの問題を解決することは難しかった。磁力をオフにするには、どうしても“距離”が必要になってくる。磁石を近づければオンになってしまうので、キャップの中にカスをためることができなくなる。離せば保管庫の役割を果たすことができるが、離せば離すほどサイズが大きくなってしまう。

 消しカスがきちんと落ちて、筆箱の中に入るサイズにしなければいけない。開発チームの間で「もう少し離して」「いやいや、もうちょっとだけ近づけて」といった会話を何度も交わして、ようやく商品が完成したのだ。

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