A.地理的な制約を大きく受ける業種・職種とは違い、地理的な制約を大きく受けない業種・職種は「そもそも転勤の必要性が相当低くなった」可能性もあるだろう。
連載第1回で述べたように、人材配置施策において“転勤”は必須ではなく、代替手段として、遠隔から業務を行える可能性が出てきた。人材育成施策でも同様に、物理的に移動しての経験は不要という可能性もある。
こうした業種・職種の企業では、雇用区分も設けずに「(2)原則“強制”転勤なし」パターンも選択肢に挙がる。
ただし、その判断を下すには、
……など、さまざまな現状確認・検証プロセスが必要だろう。
現状確認・検証の結果、ほとんどの業務で遠隔対応が可能で、転勤総数自体もかなり減らせるめどがある場合は、大きく舵を切って“原則、望まない転勤の廃止”でもよいだろう。
仮に、ほとんどの業務が遠隔で対応可能でも、転勤が必要になる場合もある。遠隔業務で対応不可なポジションの業務の空き枠に対し、社内外の募集で適任者が見つからなかった場合、スピーディに事業を推進しようと思えば、社内の適任者に企業側から打診して、転勤させざる得ない状況もあるだろう。
そのため、そうしたイレギュラー扱いとなる転勤ルールを見直しておく必要はある。本人が望まない勤務地への転勤となる場合は、経済的インセンティブを明示し、例えば最大5年間など期限付きであることを明示するなど、今後のキャリアが描きやすく、同意が得やすい施策の検討が必要である。
余談になるが、社員は希望する勤務地で働くことができる……という施策をとると、組織のマンネリ化も起き得る。その一方、リモートワークが普及した今、物理的な異動は伴わず「リモート転勤」も可能である。そうしたリモートを前提とした組織の在り方に見直す企業も出ている。
そのような施策が進んでいけば、今後も非対面コミュニケーションは続く。この2年あまりコロナ禍で、目的があるコミュニケーションはWeb会議、各種ツールを使えば問題がないことも分かってきた。しかし「ちょっといいですか」から始まるコミュニケーションや、雑談から生まれるアイデア創出の機会が減る、新しく組織に入った社員は既存メンバーと打ち解けにくい……といったケースもある。
だからこそ、転勤制度見直し(それに伴う、テレワーク制度見直し)といったハード面の整備と合わせて、組織全体の生産性を意識した、ソフト面での工夫もあわせて考えて進めることが重要だろう。
現在進行形でさまざまな企業が施行錯誤しているが、タテのつながりである1on1だけでなく、ヨコのつながりを意識したオンラインでの雑談の場を設ける、出社定例日を作るなど、人事や管理職が意識的に取り組み、組織の生産性を高めるつながり・場づくりを意図して提供していくことも重要だ。
・後編「『望まない転勤』を廃止 対象社員をどう選ぶのか? すでに転勤済みの社員はどうする?」に続く
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