なぜ、転勤廃止は「難しかった」のか? “過去形”になった理由新連載「どうなる? 強制転勤廃止」(1/3 ページ)

» 2022年02月10日 07時00分 公開

 長期雇用を前提にさまざまな職務・勤務地を経験させ、“会社の一員”として社員と契約を結んでいる──。そんな日本型企業では「社員の働く場所は当然ながら会社の一存で決まる」という考えは当たり前だった。しかし昨今では、JTB、NTTなどの大手企業が、単身赴任や望まない強制転勤を廃止している。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 本記事では、そもそもなぜ転勤は必要とされているか、これまでなぜ強制転勤を廃止できなかったか、昨今の強制転勤廃止の背景にあるものは何か、望まない強制転勤廃止は必要なのか、などについて触れる。

なぜ、転勤は必要とされているのか

 労働政策研究・研修機構が2017年に発表した「企業の転勤の実態に関する調査」によると、企業が転勤を行う目的は「社員の人材育成」が最も多く66.4%。以下「社員の処遇・適材適所」(57.1%)、「組織運営上の人事ローテーションの結果」(53.4%)、「組織の活性化・社員への刺激」(50.6%)、「事業拡大・新規拠点立ち上げに伴う欠員補充」(42.9%)、「幹部の選抜・育成」(41.2%)、「組織としての一体化・連携の強化」(32.5%)となっている。

photo 転勤の目的=労働政策研究・研修機構の企業の転勤の実態に関する調査より

 部署や勤務地も含め、多様な場所で経験を積ませてローテーションを行いながら人材育成を行っていく──。こうした方針が、多くの企業で取られていることが伺える。

 また、企業の人材配置施策では「欠員補充」と「適材適所」を迅速かつ最適に行うことも重要だからこそ、転勤という手段をもっておくことが必要である。加えて、転勤によって社員同士の関わりを定期的、かつ意図的に入れ替えることでマンネリを防止し、組織の活性化を図る狙いがあることも伺える。

なぜ、強制転勤の廃止は難しいのか? 内部要因と外部要因

 なぜ、強制転勤の廃止は難しいのだろうか。

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