ロシア軍のウクライナ侵攻が始まる前に、水面下ではしばしばサイバー戦争が繰り広げられていました。各国政府や企業は現在、市民や従業員に対してサイバー攻撃に警戒するよう注意を促しています。こうした背景から、今後数カ月はサイバーセキュリティへの関心が高まり、投資が増えると見込んでいます。
私たちはインターネットセキュリティに関し、定期的に企業に対してエンゲージメントを実施しています。しかし、サイバー攻撃などへの十分な備えがある企業は、わずか25%にすぎないとの分析もあります。インターネット上で商取引などが増え、重要情報が保存され、IoT(モノのインターネット化)の進展によってこのトレンドが今後も続くと見込まれているにも関わらず、です。
サイバー攻撃によるデータの盗難、重要なサービスの停止、交通障害などは社会だけでなく、それぞれの企業やサプライヤー、消費者にとって脅威となる可能性があります。
ウクライナ戦争の前であっても、ESGの問題は広範にわたり、複雑でした。しかし、戦争によって、しばしば相反する社会的、倫理的な配慮という課題も浮き彫りになりました。一段と複雑になる状況に直面し、多くのESGアプローチはさまざまな問題のさまざまな順序、それらの相互作用、急速な変化を把握するのに一筋縄ではいかないことでしょう。
詳細なセクター(業種)の専門知識と企業との強固な関係に加え、マクロ的な洞察力とダブル・マテリアリティ(社会や環境が及ぼす企業への影響と、企業が社会や環境に及ぼす影響の両方を重視する)の視点も組み合わせることで、たとえ目の前の出来事の帰趨(きすう)が見えにくくても、投資家は少なくとも将来起こり得るジレンマに可能な限り備えることができる、と私たちは考えています。
フィデリティ・インターナショナル、グローバル・ヘッド・オブ・スチュワードシップ&サステナブル・インベスティング。エンゲージメントから議決権行使、ESGインテグレーションを含む戦略および方針策定といったフィデリティのサステナブル・インベスティング活動全般の責任者を務める。
【ESGコラム】ウクライナ戦争が引き起こす企業と投資家の社会的、倫理的ジレンマ
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