攻める総務

いま、総務が「オフィス外」に目を向けるべき理由総務のための「オフィス」再考(1/2 ページ)

» 2022年04月21日 07時00分 公開
[金英範ITmedia]
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 新型コロナの出口が模索される中、ビジネス現場は「これ以上は待ったなし」の状況を迎えています。新入社員の入社、停滞していたプロジェクトの再開などで、自然と出社率が上がり、マスクやアルコール消毒、検温などを伴うものの、コロナ以前とほとんど変わらないようにも映ります。見方によってはアフターコロナという状況なのでしょうか。

 一方、表面上は以前に戻ったように見えますが、リアルとリモートを組み合わせたハイブリッドな働き方が今後も主流となりそうです。そのような中、総務としてはどのような戦略を立て実行していけばよいのかが今回のテーマです。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 戦略を立てる上で一番重要なのはマーケティングだと筆者は考えます。MBAの資格を保有している総務は珍しいですが、あらためてMBAのエッセンスとしてマーケティングを勉強し直すタイミングが来ています。

 なぜかというと、経営に例えるなら、ターゲットとなる市場が大きく変化し、ユーザーの動向・志向も変化しているタイミングだからです。マーケットをきちんと定義し、その上で戦略を立てることが必要だからです。

 総務の責務を考えてみると、直近50年間、主なマーケット≒働く場≒オフィス内(関連施設、工場や研究所を含む)だったといえます。つまり総務が責任を持つ経済は「オフィス内市場経済」でした。具体的には家具・什器(じゅうき)、清掃、空調、電気、文房具、コピー複合機、各種オフィスサービス、社食、植栽などのB2Bの市場や業界が長年君臨してきました。

 ところが前述の通り、ハイブリッドな働き方が普及、マーケットが変化し「オフィス外市場経済」へと発展しています。具体的にはコワーキング、在宅支援関連サービス、郊外型ワーク、ワーケーション、そのためのツール、メタバースなど、今後発展が望める市場でもあります。

 総務の業務内容が難しくなっているのも、そのような複雑な環境変化によるでしょう。どうしても「仕事が増えてしまう」ので、こうした状況はできれば避けて通りたいと思うのが、昔からの総務の癖です。

 しかし社員=総務の顧客と捉えると、顧客の活動する市場が多様化しているというこの状況は、マーケティングからやり直し、ターゲットを絞り込み、必要なサービスを展開するという営業プロセスを、総務としても実践する必要性が出てきていると解釈すべきです。最近の傾向として、総務の仕事をゼロベースで考え直す会社も増えてきています。筆者のもとに、そうした相談が増えてきているのも外部環境の変化によるものかもしれません。

 従来、総務が得意としていた皆一律の制度設計は成り立ちません。そのままだと働き方が多様化している社員の生産性を落としてしまいます。そこで、ペルソナマーケティングに近い手法で、社員の属性(年齢層、結婚・未婚など)を分析し、個々の事情をきちんと理解した柔軟な制度を設計することで、社員のエンゲージメント向上、全体の生産性アップにつながります。これは総務責任者という仕事が、より戦略性をもって会社の生産性に貢献する魅力的な仕事になることを意味します。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 では、このようなハイブリッドな働き方が普及していく中、総務はどのようにして社内マーケティングに着手すべきでしょうか。次の3パターンで分類してみてはどうかと筆者は思います。

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