一方で、休みたくても休めない働く人たちが、置き去りにされているという不条理も存在します。
賃金格差、学歴格差、企業格差、休日格差、健康格差、教育格差など、仕事、家庭、コミュニティーなどの「生活世界」を分断する壁が、無数に存在する社会に日本も向かっているように思えてなりません。
本コラムでも、たびたび「非正規雇用」の在り方について、取り上げてきました。新型コロナウイルス感染症の出現により、たくさんの非正規雇用の人たちが仕事を失い、たくさんの女性たちが悲しい選択をしました。なのに、非正規雇用の問題も女性の低賃金問題も置き去りにされたままなのは、なぜ?
非正規で働く人は、役員をのぞく雇用者の約4割を占め、働くシングルマザーの3人に2人が貧困とされています(OECDの報告より)。
さらに、日本の貧困層は働けど働けど楽にならない「ワーキングプア」が9割を占め、その中には 大学院などを出た「高学歴ワーキングプア」も含まれている。ワーキングプア世帯は推計247万世帯で、北海道の全世帯数に相当するとの試算もある(「中高年ワーキングプアの現状と課題― キャリアアップ・就労支援制度に新しい視点を」) 。
なのに、ワーキングプアという言葉も聞かれなくなったのは、なぜ?
それだけではありません。
国家公務員の非正規職員の割合は、12年の19.6%から19年には22.1%まで上昇し、省庁別に見ると厚生労働省が圧倒的に多くて3.4万人、52.7%と半数以上が非正規公務員です(日本国家公務員労働組合連合会=国公労連のパンフレット「非正規公務員を差別しないで! ――国の非常勤職員の手記――」より)。
これはハローワークの相談員が非常勤化されているためで、14年の時点でも、相談員5人のうち3人が非正規公務員で占められていました。
つまり、「仕事を失った人」を、非正規公務員=不安定な身分の職員がサポートするという、やりきれない現実が存在しているのです。
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