本連載は、『「働かないおじさん問題」のトリセツ』(アスコム)の著者、難波猛氏が、著書の内容を基に最新の情報を加えて加筆修正したものです。
2019年以降、早期・希望退職者を募り、人員削減を行う企業が増加傾向です。
東京商工リサーチによると18年は12社4126人、19年は35社1万1351人、20年は93社1万8635人、21年は84社1万5892人と、上場企業だけで3年連続1万人を超えています(「2021年上場企業『早期・希望退職』募集状況」)。
この中で、20年2月〜21年3月に希望退職を実施した企業の96%が適用開始年齢を設定し、うち66%が40歳または45歳以上を募集対象にしています(「労政時報」第4014号)。
また、19年以降、経済界や大手企業でも「終身雇用を守ることが難しい局面に入ってきた」「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることに限界がきている」などの発言が増え、21年には“45歳定年”の議論が大きな話題になりました。
一方で、21年4月には「高年齢者雇用安定法」が改正され、70歳までの就業機会確保が努力義務化されました。
――入り組んだ複雑な状況下で、特に渦中にあるのが、定年前で企業の中で人数も多く処遇も高く、本人の生活コストが高い40代・50代のミドルシニア層です。
私の仕事は人事コンサルタントですが、クライアント企業から活性化やキャリア支援の依頼を受けるのも、上記年齢層に関するものが中心です。
そうした中、「働かないおじさん」という言葉を目にする機会が増えました。22年現在、ネット検索すると数百万件がヒットします。
「働かないおじさん」という言葉は、一般に「真面目に仕事をしないで給料をもらっている人」「働く意欲が低い年配社員」といったイメージがあるかもしれません。
しかし、実際の「自社のミドルシニアを活性化したい」という相談の中身は多種多様で「本人が意図的にサボっている」というサボリーマン的な内容はごくわずかです。
企業側の期待や環境変化に十分応えられない一部のミドルシニア社員に対して、経営者・人事・上司たちの問題意識が高まっています。
「働かない」というより「うまく働けない」結果、周囲から「働いていない」と判断されるのが実情です。
「そんなことはない、わが社にはサボり社員が放置されている」という場合は、シビアですが本人の責任だけではなく「それに気付けない(または気付いて放置している)経営者や人事や上司」と「その状況を見て見ぬふりをしている(自分も含めた)同僚たち」にも責任の一端があります。
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