10人に1人が半年で辞める時代に、「スタバ」「マック」の姿勢から学ぶべきこと店舗の人材教育(1/4 ページ)

» 2022年04月28日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 パートタイム労働者の離職率は12.9%で、入職率12.7%を上回り離職超過となっています。一方、正社員の離職率は6.3%、入職率は7.1%と安定的な状況と見受けられます(出所:厚生労働省「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」)。

スタバとマックの取り組みとは?(提供:ゲッティイメージズ)

 パートタイム労働者は、半年で10人に1人が辞めていることになります。次のグラフを見ていただけると分かる通り、パートの離職率が入職率を上回る状況は、コロナ発生前の2018年から既に始まっていました。

 小売業や飲食業の店舗にとって、パート・アルバイト従業員の離職は採用費の負担増だけを意味しません。新メンバーへの教育が繰り返されることで、既存メンバーが疲弊して離職する可能性が高まります。その結果、現場はオペレーションを回すことに終始してしまい、顧客に十分な価値を提供できないという負のサイクルに陥ります。

 さらに、政府が推進しようとしている最低賃金の引き上げによって、1人当たりの人件費も高騰します。

 このような状況下で収益を確保するために求められる選択肢は以下の3つです。

(1)人が辞めない環境を作る

(2)粗利を増やす

(3)人件費を増やした分、他の経費を削減する

 おそらく、多くの企業は(3)「他の経費を削減する」を選択し、広告費などをもっと下げられないかと検討することでしょう。

 しかし、伸長する企業が選択しているのは(1)と(2)です。

 店舗の人材教育やコミュニケーションを重視し、それを価値に変え、店舗の客数増へ貢献させていく仕組みを作っています。そうした方向に舵(かじ)を切っているスターバックスとマクドナルドの取り組みを紹介したいと思います。

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