1000円超の“高級のり弁”に行列、外食大手も注目 昔懐かしい国民食がなぜブームに?長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2022年04月29日 08時45分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 コロナ禍でテークアウトを選択する人が増える中、ブームになっているのが昔懐かしい「のり弁」だ。

 のり弁は、持ち帰り弁当の業態を確立し、全国に普及させた「ほっかほっか亭」1号店(1976年、埼玉県草加市にオープン)の開店当時からあるメニュー。昭和30年代に家庭で作られていた、ねこまんま風の「のりおかか弁当」をアレンジしたものだ。給食が普及していなかった頃、子どもがお昼に学校で食べていた、いわゆる「おふくろの味」である。

のり弁の改善を続けるほっかほっか亭

 のり弁のシリーズは今でも、ほっかほっか亭に限らず、持ち帰り弁当チェーンの売れ筋上位に位置するロングセラー商品だ。

 それが時を経て、コロナ禍で再注目されている。ステイホームによって家庭料理が見直されたことや、町中華や喫茶店の良さが再発見される昭和レトロブームも背景にあるだろう。スーパーやコンビニでのり弁の存在感が、より一層増している。

 しかし、のり弁が復興する兆しは2015年頃からあった。この年に、福島県郡山駅の駅弁「海苔のりべん」が、全国放送のテレビ番組で取り上げられたのをきっかけにヒットした。全国的にのり弁の駅弁は珍しく、駅弁ファン、鉄道ファンの琴線に触れる商品となった。

 17年に東京・銀座の松坂屋跡を再開発した「GINZA SIX」に、高級のり弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」がオープンしたインパクトも大きかった。同店では乃が美が高級食パンを流行らせたようなイメージ戦略で、テークアウト用の紙袋にも高級感を持たせ、お土産にもなるのり弁の市場を開拓した。

 20年には、神奈川県逗子市に本店を有する湘南のローカルスーパー「スズキヤ」がお茶漬けとしても楽しめる画期的な「鮭と彩り野菜の茶々のり弁」を開発。「お弁当・お惣菜大賞2020」(主催:全国スーパーマーケット協会)におけるのり弁部門で、最優秀賞を受賞した。のり弁の新たな可能性の扉を開いた。

 また同年、立ち食いそば「ゆで太郎」が、のり弁を発売。大手外食チェーンでは珍しいのり弁のレギュラーメニュー化を果たし、大きな反響を呼んでいる。

 低価格から高級品までが存在し、懐具合や気分によってさまざまなのり弁が選べる時代になった。のり弁ブームをけん引するプレーヤーたちの動向に迫った。

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