コンビニ業界ではローソンが、25年に冷凍食品の売り上げを20年と比べて5倍にすると宣言している。この背景には新型コロナウイルスによる外出自粛で、長期保存が可能で手軽な冷凍食品のニーズが高まっていることがある。品ぞろえの強化と、回遊性を高めた選びやすく買いやすい売り場を目指した店舗改装を推進している。
店舗改装では約4300店舗で店舗改装を実施。改装後、冷凍食品の陳列数が約2倍(約60品から約110品)に拡大した店舗もある。
品ぞろえでは、21年11月30日から冷凍食品メニューを拡大している。解凍不要のデザートや健康志向のパンなどのラインアップのなかでひときわ目を引くのが「真鯛お刺身」「カンパチお刺身」(それぞれ505円)、「鮮馬刺し赤身スライス」(808円)、「牛ユッケ風」(819円)だ。
「真鯛お刺身」「カンパチお刺身」は国内の養殖場で水揚げされた真鯛、カンパチをスライス後凍結した。
「鮮馬刺し赤身スライス」は鮮度のよい馬肉を食べやすいサイズにスライスしている。「牛ユッケ風」は生ハムの製造技術を用いた牛肉の生ハムで、生の牛肉赤身の食感はそのままに、素材のうまみを引き出したという。
「真鯛お刺身」「カンパチお刺身」「鮮馬刺し赤身スライス」は流水解凍、「牛ユッケ風」は冷蔵解凍をする。賞味期限は刺身と馬刺しで約6カ月、ユッケは約8カ月とする。
なぜローソンは冷凍食品でナマモノに挑戦したのか。同社FF・日配食品部シニアマーチャンダイザーの林洋一郎さんと、FF・日配食品部マーチャンダイザーの島津裕介さんに話を聞いた。
――なぜ今回冷凍食品で「ナマモノ」にチャレンジしたのですか?
島津氏: コロナ禍でおうち時間が増え、冷凍食品に対するお客さまのニーズが変化しています。今まではストック需要がメインでしたが、リモートワークのランチでサクッと食べられる「即食」のニーズも高まってきました。また、外出自粛で自宅での家飲みの機会が増えるなか、冷凍食品でもつまみの1品を提供できないか考え、居酒屋メニューの定番である刺身、馬刺し、牛ユッケを開発しました。
――鮮度はどうやって保っているのですか?
島津氏: 一般的な冷凍食品は冷風を当てて冷凍しますが、刺身ではアルコール液の中に入れ、急速冷凍する「凍眠」という技術を採用しました。これによって鮮度感や魚種自体のドリップ(冷凍した食材の細胞内にある氷が溶けて出てくる水で、肉や魚のうまみ成分が流出する原因になりうる)を防ぐことができます。
――スーパーで売っている刺身を購入するのではなく、冷凍の刺身を購入する利点などはあるのでしょうか?
島津氏: スーパーはスライスされていない切り身のものが多く、1人前だとどうしても量が多い場合があります。「真鯛お刺身」「カンパチお刺身」は6〜8枚程度のスライスされたサイズで、身近なコンビニで手ごろな価格で購入できる点を訴求しています。
――開発において苦労した点はありますか?
島津氏: スライスをする作業はハードルが高かったです。機械ではスライスの厚さを調整できないので、人の手でスライスをしています。厚さもドリップが出にくい最適な厚さを綿密に検討しました。
――売れ行きはどうですか?
島津氏: メインのターゲットは30〜40代男性に設定していますが、「馬刺し」「ユッケ」は意外と女性の購入が多いことも明らかになりました。
またアルコール類との買い合わせも多く、客単価アップにもつながっています。
――25年に冷凍食品の売り上げを20年比で5倍にするために、どのような戦略を考えているのでしょうか?
林氏: 冷凍デザートやベーカリー、容器ごとレンジであためられる米飯やラーメン、そして刺身など、今までにない商品の開発に挑戦しています。店舗改装も強化しており、お客さまの回遊性を高め、売り場面積や設備を抜本的に改装しています。品ぞろえの強化と店舗改装の相乗効果で、今後も売り上げ拡大を目指します。
――ローソン全体の冷凍食品部門での今後の展望について教えてください。
林氏: 直近で売り上げが抜群に良いのが冷凍デザートです。「4種のマカロン」「フォンダンショコラ」など、大変好評いただいているので、デザートは強化する方向で考えていますね。
今回チャレンジした「刺身」「馬刺し」「ユッケ」に関しても事前にお客さまにヒアリングした際に要望をいただいていたものです。コンビニエンスは変化対応業なので、都度都度お客さまのニーズを見極めていこうと思います。
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