観光施設を利用している人の内訳をみると、7割ほどが外国人だった。この層に向けたカレーを提供すれば、客が集まるのではないかと考えたわけだ。海外のお菓子売り場には、赤、青、黄といった派手な色のモノが並んでいる。であれば「食欲を減退させる色」のカレーをつくっても、外国人は抵抗なく食べてくれるのではないかと。
方向性が決まったので、早速手を動かすことに。料理が好きな芦澤さんは、プロの手を借りずに「青色のカレー」づくりを始める。当然といえば当然だが、なかなかうまくいかない。ジーパンのような濃い青色を出すことはできたものの、理想は「ブルーハワイ」(カクテルの名称)のような青い海をイメージした色を考えていた。
来る日も来る日もカレーをつくって、来る日来る日もカレーを食べて。スパイスの配合などを変えて、理想の色に近づけようとすると、離れていくものがあった。味である。ブルーハワイのような色に近づけようとすると、味が落ちてしまい、味をおいしくすると、ブルーハワイの色から遠くなってしまう。まさに「彼方(あちら)を立てれば此方(こちら)が立たず」の世界である。
商品開発の途中で「焦り」を感じるわけだが、この話を聞いていて「落としどころを考えて、ジーパンのような色でもいいのでは」と思われたかもしれないが、芦澤さんは違う見方をしていた。「ブルーハワイのような色でなければ驚きを感じることができませんし、味を落とせば意外性を感じることができません。この2つを満たすことができなければ、集客は難しいと思っていました」(芦澤さん)
会社でカレーを食べて、仕事が終われば同僚に「おつカレー」と言って、家でまたカレーを食べる。商品を完成させるために、カレー漬けの日々を送る。
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