──そうなんですね。掃除などの罰則の場合はいかがでしょうか?
佐藤弁護士: ノルマを達成できなかったとして、玄関やトイレの掃除をさせたり、罰ゲームをやらせたりすることも、違法になる可能性があります。
実際、営業ノルマを達成できなかった従業員にコスプレさせ、その格好のまま研修会で発表させた事案や、労働組合のバッジを外さなかった従業員に外回りの掃除を命じた事案などで、違法との判断が下されています。
売上目標やノルマを設定すること自体は、業績を伸ばしたり、社員のモチベーションを上げたりするのに必要なことであり、問題ありませんが、ペナルティーを与えるやり方には慎重になるべきでしょう。
──ドラマではペナルティーの他にも、上司が普段から主人公に「売れなかったらどうなるか分かっているんだろうな」と詰め寄ったり、「(物件を売れないなら)マグロ漁船に乗るか?」と聞いたりして、プレッシャーを与えています。こうした言動は違法になるのでしょうか?
佐藤弁護士: これらは、パワハラとして違法となる可能性があります。
パワハラとは、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものという、(1)から(3)までの3つの要素を全て満たすものです。
社会通念に照らし、許される限度を超えていると違法性が認められますが、「売れなかったらどうなるか分かっているんだろうな」「(物件を売れないなら)マグロ漁船に乗るか?」といった発言は威圧的であり、場合によっては解雇などもあり得るのではないかと、部下の恐怖心をあおるような内容です。
そのため、発言の頻度や継続性、発言がなされた経緯や状況、発言者である部長と部下との関係性などによっては、違法性が認められる可能性があるでしょう。
──ありがとうございます。ドラマでは上司の威圧がコミカルに描かれていますが、実在したら違法となる可能性が十分あるのですね。
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