ドラマ『正直不動産』、上司の叱責やライバル企業の嫌がらせは違法じゃないの? 弁護士に聞いてみた身近なネタから法律相談(1/3 ページ)

» 2022年05月10日 07時00分 公開

 不動産業界のリアルをコミカルに描くドラマが話題になっている。NHKで放送中の『正直不動産』だ。同名の漫画(小学館)が原作で、累計発行部数は220万部超(2022年3月時点)と、こちらも人気が高い。

 ドラマ・原作漫画ともに不動産業者への取材と、専門家からの監修をもとにストーリーが作られている作品だ。ウソだらけの不動産業界で、ウソがつけなくなった営業マンの主人公は生き抜くことができるのか──といった内容からも分かるように、“ウソだらけ”で“売り上げ第一主義”な不動産業界の裏側を描いていることがヒットの背景の一つだ。

NHK公式サイト(ドラマ情報ページ)より

 作中には数々の“売り上げ第一主義”な言動が登場するが、筆者はドラマを見ていてふと「どこまで現実に許されるのだろうか?」と気になった。

 そこで、「ペナルティーを設けるような組織運営は違法ではないのか?」「ライバル企業からの嫌がらせに法的対処はできるのか?」といった疑問を、ハラスメントなど労働関連の法律に詳しい佐藤みのり弁護士にぶつけてみた。

お話をうかがった方:佐藤みのり 弁護士

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慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。ハラスメント問題、コンプライアンス問題、子どもの人権問題などに積極的に取り組み、弁護士として活動する傍ら、大学や大学院で教鞭をとり(慶應義塾大学大学院法務研究科助教、デジタルハリウッド大学非常勤講師)、ニュース番組の取材協力や法律コラム・本の執筆など、幅広く活動。ハラスメントや内部通報制度など、企業向け講演会、研修会の講師も務める。


売り上げに対するペナルティーは違法かどうか

──作中では、売り上げに固執する上司が部下にペナルティーを設けるシーンがいくつかありますが、どこまでが適法でどこからが違法なのでしょうか? 第4話でも、上司が「販売強化する物件について、1部屋も売れなかった営業にはペナルティーを設ける」といった内容の指示をしていました。

佐藤弁護士: 営業成績に応じてペナルティーを与える場合、やり方によっては、違法になる可能性があります。

──ペナルティーが罰金・天引きなどの金銭の場合と、玄関・トイレ掃除などの行動の場合で対処が違うものでしょうか?

佐藤弁護士: ペナルティーとして罰金をとったり、給料から天引きしたりすることは、労働基準法違反になり得ます。

 労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めており、「1部屋も売れなかったら○○円の罰金」などとあらかじめ約束させることはできないのが原則です。

 また、賃金はその全額を支払わなければならないため(「賃金全額支払いの原則」労働基準法24条)、ノルマの未達を理由に給料から天引きすることも認められません。

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