国鉄最後のSLから40年以上、成功している「SL運行」の共通点は「地理的条件」が重要(1/4 ページ)

» 2022年05月11日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]

 国鉄最後の蒸気機関車(SL)が1976年に引退してから、40年以上が経過した。国鉄がJRになった現在は、鉄道文化資産を維持するため、あるいは誘客のため、鉄道各社がさまざまなSLを運行している。

 もちろん、各社とも苦難は抱えている。機関車のメンテナンスにお金がかかったり、沿線に多くの人が押し寄せてその対応が大変だったりと、採算面では難があるのではと思うこともしばしばだ。

 だが、SL運行は多くの鉄道会社が継続的に行っていて、乗りたい、撮りたい人が殺到している。うまくいかなかったSL運行もあれば、苦難を乗り越えて持続しているSL運行もある。

SL2両のうち1両を売却した真岡鐡道

 栃木県、茨城県でSLを運行している第3セクターに、真岡(もおか)鐡道という会社がある。同社ではもともと2両のSLを保有していたが、利用状況の悪化が続き、コスト負担が重くのしかかっていた。そのため1両を、20年に東武鉄道に売却した。

かつて真岡鐵道が運行していた「C11形325号機」。現在は東武鉄道が「SL大樹」として運行している(出典:プレスリリース)

 SLは、鉄道にとって地元客以外の利用者を動員する資源であり、観光のための貴重な資本となっている。しかし、小規模鉄道事業者にとって運行の負担は重い。真岡鐡道のSLは第三者の真岡線SL運行協議会が保有していたものの、それでもSLの維持は大変なことだった。

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