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人命を預かる仕事の重さとは? 新人CAをハッとさせたコックピットの「黒いカバン」河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)

» 2022年05月13日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

僕ら3社は(天気が悪ければ)やめようねってすぐなるけど、あそこだけはならない

岬の情報は釣り船や地元の漁師の携帯に電話をかけて「知床遊覧船」以外は一丸となっています

(事故当日)うちの船長も出るなよと言っているんですよ。本人にね。それを無視して出ちゃうこと自体がおかしい(以上、出典記事

素人同然のメンバーで運航していた出典記事

 ……など。

 同業者や元従業員たちから批判されていた会社の観光船が、北海道・知床半島の沖合いで4月23日に事故を起こしました。観光船「KAZU I(カズワン)」。14人の命を奪い、いまだに12人が行方不明という大惨事を招いた、許し難い事故です。

知床遊覧船が所有する観光船「KAZU I」(出典:同社公式Webサイト)

 この衝撃的な事故を聞いたとき、真っ先に浮かんだのは私が航空会社での勤務時に見ていた、コックピットクルーが持ち歩く“黒いカバン”でした。

 「コックピットの計器の数値は絶対に暗記してはいけない。常にマニュアルを見ながら数字を確認して、運行中も、計器の場所と数字の確認を、声に出しながらやらないとダメ。覚えた途端にミスは起こる。絶対に覚えないことが、ミスを防ぐ最大の方法なんだ。これ、持ってごらん」

 フライトエンジニア(FE)の方はこう言って、見るからに重そうな黒いパイロットケースを差し出しました(米ボーイング747-400が導入されるまで、コックピットには機長、副操縦士、FEの3人が乗務していました)。

 「重たいだろ? これがね、僕たちが人命を預かっているという、仕事の重さなんだ」

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