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過小評価されている日本企業のESG・サステナビリティへの取り組みフィデリティ・グローバル・ビュー(1/2 ページ)

» 2022年05月13日 07時00分 公開
[井川 智洋フィデリティ投信]
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 海外投資家にとって、日本企業はESGの面においてグローバル企業に後れを取っているとしばしば認識されていますが、この認識はいくつかの分野においてはすでに過去のものになっています。

(提供:ゲッティイメージズ)

 海外の投資家と話していると、日本企業の気候変動への取り組みが過小評価されていることに気づかされます。日本企業は気候変動への取り組みが遅れているというのが彼らの見解です。日本企業の開示姿勢が欧米諸国に比べて消極的であることも一因だと考えられます。

 例えば、時価総額10億米ドル以上の企業のうち、温暖化ガス排出量について、日本企業は半分以上の企業が開示していませんが、欧州企業の場合その割合は3割未満です。日本のような暗黙の了解が前提の文化において、企業はその取り組みについてこれまで細かく公表することは必要とされてませんでした。ただ、気候変動という地球規模の共通課題に直面する中で、近年は日本企業の姿勢も変わってきており、対話の現場でも開示のあり方について積極的に質問を受けるようになりました。

図1:日本企業・欧州企業による温暖化ガス排出量の開示状況(出所:Trucost。2021年3月16日時点。時価総額10億米ドル以上の企業を集計)

 日本企業は、実は世界の中ではむしろ優等生であるというのが当社の認識です。例えば、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のサポーターの数やカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)のA評価の企業数は日本が世界で一番多い水準にあります。また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、企業が保有する特許の分析をもとに、日本企業の気候変動に対する適応力は諸外国に比べて高いと報告しています。こうした日本企業本来の気候変動への積極的な取り組みは、開示の広がりとともに今後広く一般に知られていくと見込まれます。

図2:国別のTCFD賛同機関数(出所:TCFD公式ホームページ、TCFDコンソーシアムよりフィデリティ投信作成。2021年1月27日時点)
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