就活戦線に異状あり──10年前の人気企業がTOP10から“消滅”した理由13卒と23卒の人気ランキングを比較(4/4 ページ)

» 2022年06月02日 06時30分 公開
[樋口隆充ITmedia]
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就活は企業とのマッチング

 就活生の中には、第一志望の企業から内定が出た学生、競争率が高い難関企業から内定をもらい、周囲から祝福される学生がいる一方で、周囲が内定報告に湧く中、なかなか内定が出ず焦る学生、希望通りの企業から内定が出なかった学生なども多数いるだろう。

 希望通りの就職活動を進めることができた学生は、学生時代の努力が評価されたということだ。素直に賞賛したい。これに対し、苦しい就活を送っている学生もいるだろう。そんな学生に、ドラマ「半沢直樹」(TBS)から、印象的なセリフを引用したい。

「『勝ち組』『負け組』という言葉がある。私はこの言葉が大嫌いだ。大企業にいるからいい仕事ができるわけではない。どんな会社にいても、どんな仕事をしていても自分の仕事にプライドを持ち、日々奮闘し、達成感を得ている人を本当の『勝ち組』と言うのではないか」(シーズン2、4話「セントラル証券」編より)

photo ドラマ「半沢直樹」(出典:Paravi公式Webサイト)

 終身雇用制度が当たり前だった以前の日本社会では、新卒の就活時の結果がその後の人生の大半を決めていた。しかし、今は転職が当たり前の時代になっている上、「第二新卒」という制度も普及しつつある。新卒一括採用を廃止し、通年採用を導入した企業も登場した。

 新卒時に思うような結果を得られなかったとしても、与えられた環境でベストを尽くすことで、当時の志望企業に行けるチャンスはあるし、社会人経験を積むことで、就活生だった当時とは違った景色が見えることもあるだろう。

 また、この10年間で企業を巡る環境が一変したことからも分かるように、22年6月時点で人気の大手企業が今後10年間も安泰という保障はどこにもない。逆に、偶然入社した無名企業が、数年後に“大化け”している可能性もあるのだ。

 23卒の就活も終盤に差し掛かっている。面接には運や相性なども影響することから、就活は一種の「企業とのマッチング」に過ぎない。自分と縁がある企業を探すことで、思わぬ出会いにつながることがあるかもしれない。

企業は就活生に適切な対応を

 一方、企業に対しては、就活生も潜在的な「お客さま」「ユーザー」であるという視点を持つ必要がある。将来の「取引先」になる可能性もあるだろう。

 記者もかつて、回答を全て否定する「圧迫面接」をする企業や、選考後、半年近く経過してからメール1通で不採用通知(いわゆるお祈りメール)を送ってくる企業に遭遇した。メールがあるのはまだいい方で、結果に関する連絡すらない企業もあった。いずれも皆が知っているであろう、大手企業だった。

 就活生に対して、採用側の立場を利用した高圧的な態度や、配慮を欠く対応を取ると、昨今はSNSなどで炎上するリスクがある。吉野家が、就労ビザを理由に、外国籍の学生を説明会から“排除”していた事例が記憶に新しい。この事案は、就活生のTwitterでの告発が発端だった。

photo 外国籍の学生への不適切対応が問題視された吉野家(出典:同社公式Webサイト)

 就活生も企業の対応をよく見ており、採用選考時にネガティブな印象を持たれると、潜在的な顧客を失うことにもつながる。裏を返せば、学生にとって就活は、企業の“実態”を可視化する、いい機会とも言える。

 採用人数に制限があり、人気企業になると全応募者の応募書類に目を通すことができないこともあるかもしれない。だが、応募者は書類作成に時間をかけ、企業が指定した面接日時に予定を合わせただけでなく、面接時にも志望動機などで、少なからず、その企業に思いを馳せている。

 最終的に不採用という結論に至ったとしても、就活生に対し、企業として節度ある対応が求められる。

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