必ずしも「日本のDXはダメダメ」ではない 日本人は何が得意なのか?IPA×ITmedia DX対談企画(第2回)(3/3 ページ)

» 2022年06月02日 07時00分 公開
[ITmedia]
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 中には、IT部門から「これを使ってください」といわれたものを、現場は使うものだと諦めているといいますか。自分たちで便利にできるということを知らないと思うんですよ。しかし、ここにチームリーダーなどが率先して取り組むと、周囲の生産性が上がっていくし、「こういう機能あったらよい」と頑張ってみようとするメンバーも出てくる。

 こういう自動化の工夫が有用なのは、もう一つ、それによって「データ」を生み出せるからです。よく「データが大事」といわれますが、この「データ」は過去の事業活動の記録です。ただ、逐一記録をとっていくのは人間にはとても面倒で、人力作業のデータ化は問題が起きやすい、ほとんど無理といってよいと思います。

 他方、コンピュータの場合、プログラムでログを残すようにしておけばですが、面倒がらずに簡単に記録を残すじゃないですか。このデータが、新たな革新を生み出すタネになるわけですよね。だから、日頃の作業を便利にしたいという気持ちで人力作業を自動化する、プログラムに置き換えるだけで、データが残せて、いろいろな可能性にもつながっていくと思うんですね。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

内野 そうですね。今のお話を聞いていても、やっぱりデジタルツールを使った効率化で成果が望めるものは、サイロ化させてはいけない。その人だけの取り組みですとか、その部門で閉じた取り組みで終わらせてはいけないと思うんですよね。そしてIT部門が一方的に押し付けるものでもないと思うんです。

 どの部門が、どうビジネスプロセスに参加し、どんな機能を担っているのか、全社的に見えていれば、業務/システムのサイロ化を防いだり、効率化したプロセス同士を連携させたりすることもしやすくなると思うんです。これはサプライチェーンのような社外取引先との関係でも同じだと思います。

 また、ツールをうまく使いこなし、全社に浸透させる上では、CoE(Center of Excellence)のような組織か、あるいはインフルエンサーのような人がいて、境さんがおっしゃられたように、成果を可視化しながらモチベートしていくことが大切ですよね。

 ログを見て成果をきちんと残していく。それが評価につながれば言うことはありません。そういった目標を基にプロセス全体を見る力と、成果を測る力。多くの日本企業はこれらが足りていないのではないでしょうか。逆に、うまくいっている企業の話を聞いていると、この2つの要素が必ず入っていると思います。これらがあれば、仰る通り、デジタル前提のビジネスプロセス、ビジネスモデルを作っていくことに希望が見えてくるような気がしますね。

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