削らなくても16キロ書ける! 「芯まで金属のペン」開発秘話を聞いた3分インタビュー(2/3 ページ)

» 2022年06月05日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

黒鉛の量

――メタシルの開発はどのように進んだのでしょうか?

大杉: 上司に「つくってみたいです」と伝えて、試しにつくってみることに。しかし、そこから困難が待ち受けていました。黒鉛の量をどのくらいにすればいいのか、その落としどころが難しかったんですよね。

 先ほどお話したように、従来のメタルペンだと、金属100%なので、ものすごく長い距離を書くことができますが(「半永久に書ける」とうたっているモノもある)、文字が薄い。逆に、黒鉛を増やせば増やすほど、文字の色は濃くなりますが、そのぶん書ける距離が短くなる。

 最初の試作品を使ってみたところ、黒鉛の量が少なかったようで、文字の色が薄くて「これは使えないな」と思いました。次に、黒鉛の量を増やしたところ、文字の色は濃くなったものの、書ける距離が短かったので、「これも使えないな」と。

 そんな感じで、「ちょっと薄いな」「もうちょっと濃くできないかな」「書ける距離が短いな」「もうちょっと長く書けないかな」といったやりとりを繰り返して、いまの形に落ち着きました。濃さは、2H相当で、削らずに16キロほど書くことができます。

 開発担当のメンバーが、コピー用紙に線を何本も書きまして。「往復で〇〇センチ、それを〇〇本書けたので、16キロ」と言っていました。

16キロほど書くことができる
消しゴムで消すことも

――今回の濃さは2Hですが、黒鉛の量を調節することで、HやBにすることができるわけですね。で、商品は完成したわけですか?

大杉: いえいえ。黒鉛の量は決まったのですが、次に価格の問題がありました。従来のメタルペンは高くて、1万円前後のモノが多いんですよね。メタシルは中学生や高校生を中心に使ってもらいたいので、1本1000円以下にすることはできないかと考えていました。

 他社製品を見ると、軸の部分に金属と木を合わせるなどしている。こうしたことをせずに、シンプルな構造にすればコストを抑えることができるのではないかと思いました。高級感を打ち出すことは大切なことですが、それをそのまま価格に反映させることはできません。このほかにも抑えるところはできるだけ抑えて、必要なところにはコストをかけて。こうした見直しをしたことで、1本990円で販売できるようになりました。

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