両者の目指すものが共通しているということは、1つの取り組みがDX、SDGs両方の実現につながる可能性もあるということになる。それを体現している事例が、伊勢神宮の表参道にある「ゑびや大食堂」の取り組みだ。
老舗食堂である同店では、それまで勘に頼っていた来客数の予測などにデータ分析を導入。Microsoftのクラウドプラットフォーム「Azure」を使い、顧客の来店データや年齢、性別、注文した商品、客単価や時間帯といった情報を機械学習で分析し、天気や気温、時間帯などから来客数や注文商品、客層などを予測できるようにした。
その結果、天気予報を基に仕入れを調整したり、来客予測を基に新たなメニューを開発したりといったことが可能になり、従業員のシフトが組みやすくなったことで働き方改革も実現できた。さらに、食材の廃棄を減らすことにもつながったという。
データを使った来客予測の導入というDXの取り組みが、業務の効率化や商品開発だけでなく、フードロス削減という社会課題(SDGs)の解決にもつながり、自社にとっても社会にとってもよい結果をもたらしている。取り組み方によっては、このような相乗効果をもたらすこともできるのだ。
ただし、SDGsに取り組むには覚悟も必要であり、“聞こえがよい話”だけで進めることはできないと柿内氏は釘を刺す。
例えば、パーソルグループでは同一労働同一賃金に取り組んでいるというが、これは明確なコストアップになるため、業績の悪化が伴うことは避けられない。それでも派遣事業の業界リーダーとして、先陣を切って取り組む必要があるという考えから実施に踏み切ったという。
また、ある衣料品大手企業では、自社のサプライチェーンを原材料までさかのぼり、児童労働を強いているものがないかを調査しているという。このように、原材料調達にまで目を向ければ、もしその中に問題があることが分かった場合に、よりコストの高い調達方法を選ばなければならない可能性も生じる。
SDGsへの取り組みは、ときには自社の業績低下につながる可能性をはらんでおり、“不都合な真実”に目を向けなければならない場合もあるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング