変革の財務経理

【インボイス制度の一問一答】適格請求書等の保存が必要ないのは、どんな場合?インボイスQ&A

» 2022年06月07日 07時00分 公開
[山口拓ITmedia]

 消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回(第3回)に続き、インボイス制度の疑問をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。

Q17 インボイス制度開始後の仕入税額控除の注意点を教えてください。

A17 仕入税額控除を本則課税により行う場合には、次の事項が記載された帳簿および適格請求書等の保存が要件となります。

  • (1) 課税仕入れの相手方の氏名又は名称(登録番号は不要)
  • (2) 課税仕入れを行った年月日
  • (3) 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、その旨)
  • (4) 課税仕入れに係る支払対価の額

 なお、適格請求書等の保存が必要とされない場合(Q18参照)には、上記の記載事項に加え、次の事項が記載された帳簿の保存が仕入税額控除の要件とされています。

  • (5) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れに該当する旨
  • (6) 仕入れの相手方の住所又は所在地

Q18 適格請求書等の保存が必要とされないのはどのような場合でしょうか?

A18 適格請求書等の交付を受けることが困難である次のような場合には、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。

  • (1) 公共交通機関特例の対象として適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
  • (2) 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(?に該当するものを除く)
  • (3) 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
  • (4) 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の取得
  • (5) 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
  • (6) 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
  • (7) 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
  • (8) 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
  • (9) 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

 なお、上記(1)〜(9)に該当する場合には、帳簿について、通常必要な記載事項に加え、A17(5)の「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨」およびA17(6)の「仕入れの相手方の住所又は所在地」の記載が必要とされていますが、仕入れの相手方が次の者である場合には「仕入れの相手方の住所又は所在地」の記載は必要ありません。

  • (ア)上記(1)の公共交通機関による旅客の運送について、その運送を行った者
  • (イ)上記(3)〜(5)に該当する場合の課税仕入れの相手方(古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により帳簿等へ相手方の氏名及び住所を記載することとされているもの以外のものに限る)
  • (ウ)上記(6)に該当する場合の課税仕入れの相手方(事業者以外の者から受けるものに限る)
  • (エ)上記(8)の郵便サービスの提供について、その郵便サービスの提供を行った者
  • (オ)上記(9)の出張旅費等を支給した場合のその出張旅費等の支給を受けた使用人等

著者紹介:山口 拓(やまぐち・たく) 税理士・経営支援責任者

消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/

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