新幹線の名物アイス、カチカチ食感を生んだJRとスジャータの“固い”絆とは?「固さ」に秘められた物語(1/2 ページ)

» 2022年06月07日 07時00分 公開
[ITmedia]

 新幹線での移動の楽しみといえば、カチカチに凍ったアイスクリームを思い浮かべる人も少なくないだろう。通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」としてSNSでもたびたび話題になる人気商品だ。この4月にはピスタチオ味が約2年ぶりに復活し、ファンの間で注目が集まる。車内での販売開始から約30年。あの食感と味はどのようにして誕生したのか。製造するスジャータめいらく(名古屋市)と、JRの担当者に話を聞いた。

固さと濃厚さで有名なスジャータアイスクリーム(ジェイアール東海パッセンジャーズ提供、以下同)

 座席のテーブルにしばらく置いて、やわらかくなるのをじっと待つ――。SNSにはそんな様子を写した写真がたくさん投稿されている。「旅の思い出としてアイスの写真を撮ってくれる人が増えていて、大変うれしいです」とスジャータの担当者は話す。

 新幹線のアイスクリーム、正式名「スジャータアイスクリーム」は、定番のバニラ・抹茶に加え、3つ目のフレーバーが期間限定商品として入れ替わる。車内販売を手がけるジェイアール東海パッセンジャーズ(東京都中央区、以下JR)によると、最も人気のバニラは、コロナ禍前の2019年1〜5月には合計30万個、1カ月あたり6万個が売れていたという。

アイスクリームは車内販売でお菓子やスイーツなどの分野で断トツの人気だという

 コロナ禍の影響で直近の販売個数は1カ月あたり3.6万個と減っているが、車内販売では、お菓子やスイーツなどの分野で「断トツの人気」(JR担当者)を誇る商品だ。

コーヒーフレッシュから始まった縁

 新幹線でスジャータのアイスクリームの車内販売が始まったのは91年頃。同社製を採用するきっかけは、そこから約13年前にさかのぼる。

 東海道新幹線では、78年から車内販売で同社製のコーヒーフレッシュを採用していた。車内販売の全商品の中で、ホットコーヒーは最も売れる人気商品だ。コーヒーにほんのりと甘くまろやかな風味を付け足すスジャータのフレッシュは、新幹線のコーヒーに欠かせない商品として、長年親しまれてきた。

 そんな縁から、JRとスジャータは新たに販売するアイスクリームでも協力することになった。日本の技術を結集した新幹線には「車内販売にふさわしいクオリティーの高いものを提供したい」という思いから、「スジャータの創業者で当時社長の日比孝吉氏が指揮し、より高品質なバニラアイスクリームを開発しました」とスジャータの担当者は話す。

4月に2年ぶりに販売が復活したピスタチオフレーバー。20年2月には1カ月で4万個以上売れる人気を見せた

 アイスクリームといえば、人気のハーゲンダッツなどさまざまなブランドが存在する。しかし、約30年に渡ってスジャータ製にこだわる理由は何なのか。JRの担当者に聞いてみた。

――他にもアイスメーカーは数多くありますが、なぜスジャータ製を長く採用しているのでしょうか

 「スジャータは、『新幹線のプレミアムな美味しいアイスクリーム』を一緒に作り上げてきた大切なパートナーであり、ピスタチオなどオリジナルフレーバーの共同開発などでも大きな信頼を寄せているためです」

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