メーカーと小売企業の関係性が少しずつ変わり始めている。テレビCMで大きく訴求し、店頭で山積みにして目立たせるだけでは商品は売れなくなってきている。SNSの台頭により、インターネット上で商品を買うという購買方法が根付いてきたことが背景にある。また、コロナ禍で実店舗での買い物機会を減らす動きも向かい風となった。
メーカーは店頭販売への依存度を減らし、通販サイトでの販売やD2Cの強化に急ぐ。店舗の「売れる棚の取り合い」よりも「インターネット上でどう勝ち抜くか」の比重が高まっているのだ。
NTTコムが6月に発表した「購買行動」に関する調査によると、日用品などをはじめとした12の商品群のうち9の商品で購入場所を実店舗からオンライン店舗にシフトする傾向が見られた。そうは言いつつ、まだ店舗で買いたいという需要が根強いのも確かだ。実際、同調査によると食料品や日用品の購買は「小売店や専門店」などの実店舗が最も多かった。
実店舗劣勢の状況において、「売り場」の力をメーカーに訴求するために小売企業はどのような取り組みをすべきか? 「来店客」「需要量」「接客」の3つの観点から、それぞれで活用できるテクノロジーや実際の事例を紹介する(著者:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 橋場雄士)
来店客の分析としては、「いつ」「何を」「誰が」「どのように」購買したかが分かれば理想的である。ポイントカードやハウスカードでのPOS分析が一般的だが、これらだと実際の来店人数や購入に至らなかったが気になった商品などの情報が得られないことが多い。
解決策の1つとして、カメラ×画像解析で来店客の属性や表情などをデータとして取得することが挙げられる。「体験型店舗」を運営するb8taがこのアプローチを取っている。来店客の属性や商品に対する感想を企業にフィードバックすることで、企業は消費者の意見を商品開発やマーケティングに生かす。
また、店舗の滞在時間も重要な情報となる。例えばイオンリテールが一部店舗で導入している「どこでもレジ レジゴー」(貸出用のスマホで商品バーコードをスキャンし、専用レジで会計する仕組み)というアプリの起動時間や、各企業が取り組んでいる無人店舗の入退店時のログデータから、来店客の買い物の傾向が見えてくる。ワンタイムショッピング嗜好なのか、ショートタイムショッピング嗜好なのかといった具合だ。来店客の属性や買い物行動の解像度が上がれば、より消費者のニーズに合った商品ラインアップを展開したりや陳列を工夫したりなど売り場の改善につながる。
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