「いつでも全力で走る」「オレの背中を見てくれ」 意識高い系“ブラック社長”の落とし穴ブラック社長は4種類(2/4 ページ)

» 2022年06月28日 07時00分 公開
[大槻智之ITmedia]
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理念は何よりも尊い

 A社長がブラック社長になってしまった原因は、「理念は法令よりも尊い」と考えてしまったことです。また、普段から熱い思いを伝えていたので、「すべての社員が同じ想いである」と考えてしまったことも一因です。したがって、誰でも自分と同じレベルで頑張ると思っていたのです。

 確かに、社長の考える経営理念は素晴らしいものです。また、その実現に向かって突っ走る姿はカッコいいかもしれません。しかし、そのためにはどんなものでも犠牲にしていいということはありません。社会全体のルールの範囲で目的に向かい走らなければならないのです。この会社は離職率が高止まりを続け、採用も難しくなり、経営上、難しい局面に立たされてしまったのでした。

ブラック社長の種類

 ほとんどの経営者はブラック企業と呼ばれることに対して抵抗があります。何しろ当の本人は社員が思っている以上に社員想いだったりするのです。そんな社長がなぜ会社をブラック企業にしてしまうのでしょうか? ブラック社長のタイプをいくつか挙げてみます。

黒 会社をブラック企業にしてしまう、ブラック社長のタイプ

「理念最優先」タイプ

 「いつやるの? 今でしょ」が好きで、「最後の最後まで全力でやるからこそ結果が出る」と思っているので、自分と同様の働きを社員にも求めてしまいます。そうすると、必然的に長時間労働が常態化します。その割に「報酬は成果である。時間は評価しない」という考え方を持っていることが多いので、未払い残業が発生してしまいます。

 常に”経営理念”を大義名分としており、「社員も分かってくれている」と思い込んでいるので、「ブラック企業で何が悪い」と開き直っている節があります。ちなみに、行政に対しても「労働基準法を守っていたら崇高な目的を達成できない」と考えていることも少なくないので、その手法も大胆になり、「タイムカードの改ざん」や「入社時の労働条件を簡単に反故にする」なんてことまでしてしまうのです。

「結果がすべて」タイプ

 A社長と異なり、結果を出すまでのプロセスにこだわりはありません。したがって、結果さえ出せば労働時間の長短などは気にしないのです。ただ、結果が出ていない社員に対しては非常に強く当たる傾向があり、「結果を出すまで帰るな」と指導を超えたパワハラをしてしまいます。また、「足を引っ張ったことをみんなに謝れ」というように、パワハラがどんどんエスカレート。結果として社員を休職や退職に追い込んでしまいます。どちらかというと、社員を使い捨てにしてしまうことが多いようです。

「無関心」タイプ

 管理職をはじめとした部下の言動は把握していないため、「まさか、自分の会社でハラスメントが起きているなんて思いもよらなかった」というケースです。そのほか、「そもそも法令違反だなんて知らなかった」ケースもあります。とにかく法律の知識に乏しく、現状把握もしていないので、自社がブラック企業だとは想像もしていません。

「社風が突き抜けている」タイプ

 単純に「社風が自分には合わないので居心地が悪い」として、社員からブラック企業扱いされてしまうタイプです。法令も順守しているし、福利厚生にも力を入れている。だけど、社内の雰囲気が自分と合わないだけでブラック扱いされているので、あるときネットの口コミなどを見て仰天してしまうことが多いようです。

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