「いつでも全力で走る」「オレの背中を見てくれ」 意識高い系“ブラック社長”の落とし穴ブラック社長は4種類(4/4 ページ)

» 2022年06月28日 07時00分 公開
[大槻智之ITmedia]
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限りなくブラックに近いグレー

 ブラック企業という言葉はよく使われますが、じつは明確な定義はありません。だからこそ、広い意味で使用されています。もちろん、法令に違反している会社は、まぎれもなくブラックですが、それ以外のグレーゾーンまでは、厚生労働省でも明確に定義することは難しいのです。

 では、グレーゾーンにはどのようなものがあるかというと、就業規則などに記載されない部分が該当しやすくなります。たとえば、忘年会や飲み会など、本来あくまでも参加は任意な行事にまで、なかば強制的に参加させるようなことです。これを解消するには、社員に参加を求める行事については、就業規則などに明文化しておくことです。記載されない行事であれば任意参加の行事として社員の自由意思が尊重されるべきです。

黒 ブラック=違法=搾取という歴史的背景

 限りなくブラックに近い領域には、残業代の支払いが該当します。それは、これまでの経緯として、ブラック=違法=搾取という歴史的背景があるからです。

 特に注意が必要なのは、残業代の未払いがあるかどうかです。

 実際にあった事例で、社長にはそのつもりはなかったのに、中間管理職が部下の残業時間を無断でカットし、申告しなかったというケースもあります。自分の評価を下げたくない管理職が、部下に残業をさせていないと示したくて起こしたことでしたが、これは完全に法令違反です。組織ぐるみではありませんが、一人の中間管理職者の身勝手な行動によって、会社全体がブラックと呼ばれてしまいかねないリスクを負ったのです。

 また、過労死の原因となるような過剰な残業も、大きな社会問題となりました。そのため現在、残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、一定の要件を満たさなければこれを超えることはできません。

黒 ブラックに入りやすい領域は社労士などに依頼して定期的にチェック

 会社によっては、社長や上司が、部下の愛社精神を逆手に取って、過剰な仕事を押し付けてくるというパワハラまがいのケースもあります。ギリギリ法律には抵触しない行為なのですが、ともすれば残業超過につながりかねません。このような会社は体質改善すべきです。

 同様に社長の強い理念が反映された「理念経営型」の会社でも、オーバーワークにつながりやすいリスクをはらむことがあります。理念への共感度合は、人それぞれ違いますし、理念を必要以上に押し付けてしまえば、パワハラとブラックの領域にも近づきます。

 こうしたお金や時間の管理、さらにはパワハラやセクハラなども含めて、ともすればブラックに入りやすい領域をしっかりと管理するためには、自社の労務状況を、社労士などに依頼して定期的にチェックするのがベストな対策です。

 自社の人員だけで管理をしようとしても、内々の人間関係のしがらみなどがあり、なかなか思い切ったチェックができないからです。

 また前述したとおり、副業によって、社員の時間の使い方も多様化しています。知らない間に法律に違反していた、なんてことを避けるためにも自社の定期的なチェックをしていくことが、ブラックにならないための重要なポイントになるでしょう。

ポイント

 高い目標を設定することは素晴らしいと思います。しかし、その理念を実現するためのビジョンは、具体的に示さなくてはなりません。残業を減らして売上が下がるなら、会社の運営やシステム上の問題を根本から見直すことが必要です。単価の決め方、生産コスト、どこに欠点があるのかを発見し、同業他社と比較してどうかをしっかりと理解し解決していかなければ、ブラックに類似する現象を是正することはできないのです。

著者紹介:大槻智之

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1972年4月、東京生まれ。2010年3月、明治大学大学院経営学研究科経営学専攻博士前期課程修了。経営学修士。特定社会保険労務士、傾聴アソシエ、採用定着士、ジョブオペ認定コンサルタント、仕組み経営コーチ、500社を超えるクライアントを抱える社会保険労務士法人・大槻経営労務管理事務所の代表社員。採用、目標管理、評価制度、業務改善、経営仕組み化支援までHR全般を手掛ける。人事担当者の交流会「オオツキMクラブ」を運営し、300社(社員総数20万人)にサービスを提供する。


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