真っ白なジグソーパズルが、なぜ10年で22万個も売れているのか週末に「へえ」な話(3/5 ページ)

» 2022年07月03日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

1週間で100個も売れた

 先ほど紹介したように、モナリザのあとに新しい商品を投入したものの、売れ行きはいまひとつ。「国内の風景であれば売れるのではないか」と考え、国内工場で富士山、金閣寺、蒸気機関車などが描かれたモノを発売したところ、想定以上に売れた。

 また、テレビドラマ『離婚ともだち』の中で主演の大原麗子さんがジグソーパズルをしたり、ホームランの世界記録を狙う王貞治選手が集中力を養うためにジグソーパズルをしていたり。メディアで紹介される機会が増えたことによって、人気が急上昇したのだ。同社はそうした波にうまーく乗ることができ、事業をどんどん大きくしていったのだ。

富士山のジグソーパズルは人気

 さてさて、お待たせしました。ここで宇宙パズルの登場である。先ほど紹介したように、この商品を発売したのは12年だが、最初の企画があがったのは08年ごろである。

 「2009年が『世界天文年』に定められたこともあって、社内から『宇宙にちなんだ商品を開発することはできないか』といった話がでてきました。地球儀のような形をした『3D球体パズル』を扱っていたので(いまも販売している)、その商品の販促物として、何も描かれていない『宇宙パズル』を用意してもいいのではないかという案がでてきました」(ホビー事業部の大山毅さん)

球体パズルの販促物として、「宇宙パズル」をつくってはどうか? という案があった

 しかし、その企画は却下されることに。同社は年に100種類以上のジグソーパズルを発売している。そのためには「どういった絵がいいかな」「やっぱりコレかな、いやアレかな」といったことに頭を悩ませているのに、「はあ? 真っ白だ? ムリムリムリ」といった声が出ていたのかもしれない。

 門前払いとなったので、真っ白なパズルは“白紙”の状態に。それでも、一部の社員はあきらめることができなかった。実はこのころ、他社が真っ白なパズルを販売していた。しかし、それは子ども向けのモノで、完成された真っ白のパズルに絵を描いて、それをバラしてつくるといったコンセプトである。というわけで、「宇宙飛行士試験の過去問題」とは違っていた。

 開発担当者の口から、たびたびこのような言葉がでていた。「つくらせてください」――。この情熱が会社を動かすことに。とはいえ、いきなりたくさんつくるといった話ではなく、試験的に販売することになった。取り扱うのは1店舗のみ。それだと認知が広がらないので、なかなか売れないだろうと思っていたところ、1週間で100個ほど売れた。この数字は、ジグソーパズルの世界では異例である。

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